第11章 鬼さん、こちら。✔
私の膝にこてんと頭を乗せて寝そべっている禰豆子が、つい漏らした呟きに目を向けてくる。
その可愛らしいおでこを撫でて、なんでもないと笑顔を向けた。
「カナヲちゃんって凄いんだなって思っただけ」
見るからに、炭治郎達くらいの年齢の幼さ残る女の子。
それでいて実力者なら、余程才能があったか余程血の滲む努力をしたか。
もしくは、その両方か。
「実力見るのが楽しみだなぁって」
よしよしと膝枕を堪能している禰豆子の頭を撫でながら、その場の会話繋ぎにしてしまった所為か。
「なら蛍も参加してみるか? 訓練」
「え?」
「厶?」
「は?」
「あ?」
名案!とでも言いそうな笑顔で誘ってくる炭治郎に、私と禰豆子と善逸と伊之助の声が重なった。
…今なんて?
「何勝手に決めてるんですかっこれは貴方達の訓練で…っ」
「でも参加したらいけない決まりはないし、どうせなら蛍の実力も見てみたいなって」
止めようとするアオイの声も、善意で笑う炭治郎の前では萎んでしまう。
というか私の実力?
「蛍は炎柱の継子だって聞くし」
「何ィ!? お前炎柱なんて格好良い名前持ってんのか!」
「その継子だって炭治郎言ったろ。話聞けよ」
"炎柱"という名前が気に入ったらしい伊之助も、善逸の突っ込みに耳も貸さず興奮気味に私を見てくる。
いや…まぁ、確かに継子ではあるけど…。
「でも俺も興味あるかも。蛍ちゃんは鬼と継子の両方を持つ女の子だし。やっぱ強いのかな?」
「い、いや私はそんな大層なものじゃ…」
「いいじゃねぇか! 折角だし一戦交えてみろよ! 炎柱としのぶんとことどっちが強いか!!」
えええ…というか何それ責任が重い。
炎柱の継子という肩書きでカナヲちゃんと戦り合えと?
「私なんて最近継子になったばかりだし…」
「いいけど」
「え?」
「厶?」
「カナヲ?」
どうにか弁解しようとすれば、今まで沈黙を作り続けていた可憐な唇が動いた。
私とアオイの目がそこに集中する。
…今喋ったのカナヲちゃん?
「いいって…いい、の?」
自分から意思表示するところなんて見たことがない。
それはアオイも同じだったのかもしれない。
その目が驚きに満ちていたから。