第11章 鬼さん、こちら。✔
「禰豆子ちゃん? 今日は外出も大丈夫な天候なんだって。出て来てみたらどうかな」
「……」
「俺、禰豆子ちゃんを明るい中で見てみたいなぁ〜なんて…あっ夜の君も素敵だけどね!」
「……」
「ほら! この間の夜、摘みに行った花畑も昼間だともっと綺麗だと思うしさっ」
「……」
「禰豆子ちゃぁん…ほんのちょっとでもいいから」
「……」
「んねぇずこちゃぁああん!!!」
今にも滝のような涙を流して嗚咽し出しそうなたんぽぽを追い抜いて、一歩踏み出す。
「禰豆子。大丈夫だから、おいで」
両腕を広げて呼べば、木箱から滲み出ていた色が揺らぐ。
ぱたんと扉が開くと、中から小さな女の子が這い出した。
そのまま駆け寄り様に大きく成長する体が、私の腕の中に飛び込む。
「ムぅ!」
竹筒の口枷から漏れる声は理解できないものだけど、体全身で喜びを伝えてきてくれるからよーくわかる。
というか心底可愛い何この生き物。
同じ鬼とは思えない可愛い。
「四日ぶりだね禰豆子〜っ」
「ムゥウ〜っ」
抱きしめたままうりうりと柔らかいほっぺたに頬擦りすれば、同じに擦り寄ってくる…のは凄く可愛いけど竹筒が当たってちょっと痛い。
「たかが四日だろ。大袈裟じゃねぇか?」
「…何故俺の声には反応してくれないんだろう…なぁ炭治郎…」
「え? どうだろう…禰豆子は蛍に懐いているみたいだし。同じ鬼だから反応するんじゃないか?」
そんな私達を外野で見ているのは、玄弥くんと同期の鬼殺隊の剣士達。
呆れ顔で見ている、猪の被り物を脇に抱えた美少年は嘴平 伊之助。
顔だけ見れば女の子と勘違いしても可笑しくない程の美少年。
黒から蒼へと染まっているおかっぱに、睫毛ばさばさなぱっちり二重のおめめ。
だけどその喉から発せられる声は野太く低い。
ついでに常に上半身裸の胸筋腹筋上腕二頭筋なんかも凄い。
なんて言うか…むきむきの体の上に女の子の顔が乗ってる感じ。
初めて見た時は猪の被り物も驚いたけど、その素顔にも吃驚したなぁ。