第11章 鬼さん、こちら。✔
もしかしたら…不死川は、玄弥くんのことを言う程嫌っていないんじゃないかな…。
どうあったって二人は血を分けた兄弟。
それも母と兄弟を一度に失った、唯一の家族だ。
本来なら炭治郎と禰豆子のように、絆は深まるはず。
そこに溝があるとするならば、それ相応の何か理由があるはずだ。
「その…また、共同訓練しに行くから。その時は相手してね」
「でもオレは…」
「誰がなんと言おうと玄弥くんは剣士だよ。自分で認めてさえいれば、大丈夫。そこに思いを托してくれる人はいる」
悲鳴嶼さんのように。
いつかに玄弥くんに貰った言葉を返せば、三白眼がぱちりと見開く。
やがてその口元に、ほんの微かにだけど笑みを乗せてくれた。
「ああ、そうだったな…」
「そしていつか絶対あのおっかな柱に玄弥くんを認めさせるっ」
「だからおっかな柱って言うなよ」
握り拳を作って宣言すれば、眉尻は下がっていたけど落ちていた肩は少し上がってくれた。
よかった。
「……」
「?」
診察室を去る玄弥くんの背中を見送っていれば、ちくちくと刺さる視線。
顔を向ければ、じっとこっちを見てくる胡蝶と目が合う。
なんだか意味深な表情してるけど…何?
「胡蝶?」
「…なんですか?」
思わず問えば、次にはにっこりといつもの笑顔を返された。
あれ。
気の所為だったかな…?
「いや…別に」
「では呼ばないで下さい」
相変わらずな性格。
やっぱり胡蝶は胡蝶だ。
「さて。検診の前に幾つか今回の吸血について問診を行います。正直に答えて下さいね」
「あ、うん」
そうだ。
新しい注射器を貰わないといけないから、杏寿郎から血を貰った詳細もしっかり報告しないと。
…と言っても、私が憶えていることは僅かだけど。
そういえば次に血を自分以外から貰う際は、とあることを気を付けるようにって杏寿郎から言われたんだよね…。
そのことも報告した方がいいのかなぁ…。
「……」
…なんか報告したら、今後杏寿郎から血を取るなと詰め寄られそうな気がする。
今回はそっとしておこうかな…。
杏寿郎相手なら大丈夫らしいし、結果的にも問題なかったし。
問題が起こりそうな時に、報告することにしよう。
うん。