第11章 鬼さん、こちら。✔
胡蝶もはっとするような美人だけど、継子のカナヲちゃんも目を見張る美少女だ。
本当に鬼殺隊は顔面偏差値高めでは?と思うくらい。
だけどにこにこと常に胡散臭…ごほん。綺麗な笑顔を浮かべている胡蝶に対し、カナヲちゃんはなんというか…幸薄い笑みを常に浮かべている。
業務的というか、機械的というか。
胡蝶の笑顔も作られ…げふん。お姉さんを真似しているのか、そんな感じがするけど、カナヲちゃんにはもっと感情がない感じ。
アオイやきよちゃん達、蝶屋敷の人には口を利くけど、それ以外の人に口を利く姿はほとんど見たことがない。
「さて。手当ても終わりましたし、 彩千代さんの定期検診を行います。皆、席を外して」
「畏まりました」
「蛍さん、その…」
「いつかお昼のお散歩、一緒にして下さいね」
「うん。ありがとう」
胡蝶の命で、診察室にいたカナヲちゃんを始め、きよちゃん達も頭を下げて席を外す。
あんなことがあった私のこと、気遣ってくれてるんだなぁ…本当できた女の子達だ。
「玄弥君も。君の診察は終わりましたから」
そして始終沈黙を作っていた玄弥くんも、不死川を追わずに私の怪我の様子を心配してくれた。
追わずというか…追えなかったんだろうけど。
最後まで不死川は、弟なんていないと冷たい態度を貫いていたから。
肩を落として落ち込む様は、誰が見てもわかる。
「じゃあ…」
「あ…玄弥くんっ」
「?」
胡蝶に頭を下げて去ろうとする玄弥くんの背中が余りに寂しくて、思わず声を上げていた。
でもそれから先は、言葉にできずに変な空気で固まってしまう。
「…なんだ?」
「え。っと」
なんて言えばいいのか。
慰めなんて要らないだろうけど…一つだけ、不死川のことで気になったことがあった。
確かに言葉ではこれ以上ないくらいに玄弥くんを責めていた。
殺気だってばしばし飛ばしてた。
でも…彼の持つ白菫色だけは、きよちゃん達と談話していた時と変わっていなかったんだ。
その人が持つ色はその人の特性でもある。
感情が揺らげば、色もそれに乗じて揺らぐ。
だけど不死川の優しい白菫色は、玄弥くんを突っ撥ねても激しさを増すことはなかった。
私に「鬼は皆殺しだ」と脅してきた時の方が、その色は荒ぶっていた。