第11章 鬼さん、こちら。✔
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「単に指を斬り落とされただけですよ。大袈裟ですね」
「いや指斬られるって結構な大事(おおごと)だから。痛い」
「鬼でしょう、そのくらいで泣き言言わないで下さい」
「だから鬼差別…」
そりゃ不死川の言う通り、そのうちトカゲみたいに生えてくるけど。
だからと言って簡単にスパスパ斬らないで。
そして周りも冷たい反応しないで。
痛いものは痛いから。
蝶屋敷の診察室で、丸い椅子に座って胡蝶と向き合う。
すっぱり根本から斬られた人差し指には、分厚い包帯をぐるぐると巻かれた。
私が痛い痛いと頻(しき)りに訴えたからだ。
「カナヲもいきなり斬り掛かると、きよ達が驚くから。気を付けてね」
「…御意」
部屋の隅に無言で控えていた少女が、胡蝶の注意にだけは反応を示す。
私の指を登場と同時に斬り落としたのは、この女の子。
長い髪を頭の高い位置で右に一つにまとめて、胡蝶の蝶飾りと似た髪飾りを付けている。
毛先にいくにつれて鮮やかな桃色に染まった可憐な髪の持ち主で、名前は栗花落 カナヲ。
胡蝶の継子であり、炭治郎や玄弥くんの同期である剣士だ。
「守ろうとしてくれたのは良いことだから」
「いや何から…私から? 私、きよちゃん達襲ってませんけど…」
「そ、そうです、しのぶさま」
「あたしたちが勝手に怖がってしまっただけで…」
「ごめんなさい、蛍さん…」
しゅんとしながらも弁護してくれるきよちゃん達の言葉に何も言えなくなってしまう。
やっぱり私が怖がらせてしまったんだ…じゃあカナヲちゃんに斬り掛かられるのも、仕方ないのかも…。
………いや本当に仕方ないのか?
私、きよちゃん達に手は上げてなかったけど。
寧ろ不死川と対峙してたけど。
それも原因なのか?
柱を攻撃しようとしてたように見えたから?
でもカナヲちゃんはきよちゃん達を守るように、その前に立ってたし…ううん…。
蝶屋敷に訪れる度に、主に私の監視の為にとちらほら見掛けていたカナヲちゃんだけど。
いまいち彼女の思考と行動は、よくわからない。