第11章 鬼さん、こちら。✔
「ならこの頭の痛みはナニ…? トッテモイタイ」
「す、すぐ消毒しますねっ」
「冷やせば治りますから…っ」
「ごめんなさいっ」
いやきよちゃん達は悪くない。
寧ろその優しさが痛みを緩和させる何この子達。
仏様の使いかな?
「手当てなんざ無駄だァ。そいつは阿呆面構えてるだけですぐ治る。やめとけェ」
そう言って、手当ての用意をしようとしたきよちゃんの頭を掴…んでない。
ぽんと小さな頭に軽く手を置いて、行動を止めさせただけ。
え? 何その行為初めて見たけど。
今何したのちょっと。
「…鬼差別だ…」
「あァ?」
酷くないそれ。
女子供お年寄りに優しいなら、鬼の女にだってちょっとは優しくして下さい。
私を止めるのだって頭ぽんでいいじゃない。
なんで拳骨なの酷くない。
「私にも女としてきよちゃん達と同等の扱いを求めます」
「ふざけんな誰がするかァ」
はいと挙手して優しさの提供を求めれば、中指を真上におっ立てて返された。
よくわからないけどその手なんか凄く態度悪い。
「女の前にお前は鬼だろォ」
「鬼の前に女です」
生まれた時から女だったんだから。
そう主張すれば、まじまじと見てくるかっ開いた目が…あ。
「ハァ?」
うわすっごい馬鹿にされた顔で呆れられた。
何言ってるか心底わかりませんって顔で呆れられた。
今女であることさえ馬鹿にされた気がする。
これ怒っていいよね、いいよね?
「なん──」
「兄、貴?」
一言物申してやろうとした声は、重なる声に遮られた。
聞き覚えのあるそれに振り返れば、蝶屋敷の通路奥からその人物は姿を現していた。
あ…っ
「玄弥くん!」
まさかこんな場所で玄弥くんに会うなんて。
不死川がいる場所で出会ったのは初めてだ。
偶然と言うか必然と言うか。
兄に出会いたがっていた玄弥くんだから、思いもかけない好機に声が弾む。
「こんにちはっ」
「あ、ああ…蛍は、なんで此処に…昼間だろ」
「今日はとっても素敵な曇り空だから。玄弥くんも胡蝶に用じッ?」
だけど歩み寄ろうとした足は、急に肩に感じた痛みで止められた。
きよちゃんを止めた時とはまるで違う。
食い込む程に強い力で私の肩を掴んで止めたのは、兄の方の不死川。