第11章 鬼さん、こちら。✔
「何…ってか痛」
「お前あいつを知ってんのかァ」
「え? 玄弥くん?」
あ、名前呼んだからか。
まぁ、私からお近付きになったので。
「知ってるも何も、私と玄弥くんは運命共同体みたいなもので」
「ほ、蛍っ? 何言って…ッ」
「何って、真実」
だって"不死川実弥にあわよくば近付き隊"結成したじゃない。
真顔で返せば、しどろもどろに返す玄弥くんの顔がほんのりと赤く染まる。
照れてるのか、焦ってるのか。
どっちにしろ相変わらず強面なのに可愛いなぁ。
何処かのおっかな柱とは大違い。
「共同体だとォ…?」
だけどそんなほんわかした気分も、強い殺気に呑まれて消えた。
すみちゃん達が顔を青くするくらい、その場の空気ががらりと変わる。
「テメェは鬼と仲良くする為に鬼殺隊に入ったのかァ!?」
「ち、違…」
「違うっ!」
不死川を見てからの玄弥くんは、私と会った時とはまるで別人のようだった。
声も小さいし大人しいし、本当に彼を慕っている弟なのか。
だからこそそこだけは誤解されちゃ駄目だ。
反射的に出た自分の否定声は思った以上で、不死川の血走った目も私を凝視する。
「私が勝手に玄弥くんに近付いただけ。玄弥くんは何もしてない」
「なんで鬼のお前が一隊士に近付く。目的はなんだァ」
私の肩を掴む手が、更にぎちりと強さを増した。
このままだと指圧で肉を抉られそうだ。
「っ…不死川には、関係ないでしょ」
「ァあ?」
あんたに近付く為、なんて口が腐っても言いたくない。
痛みに耐えながら睨み返せば、更に不死川の殺気が膨れる。
「っ兄貴、そいつは関係ない! オレが…ッ」
「俺に弟はいねェ。馴れ馴れしく呼ぶな」
「え…っ」
駆け寄ろうとした玄弥くんに、不死川の冷たい威圧が向く。
弟はいないって…兄弟でしょ。
「ただの隊士が馴れ馴れしく話し掛けんじゃねェ」
「お…オレは、剣士だ…ッ柱になる為に鬼を狩って…ッ」
「何うそぶいてやがる」
うそぶくって。
玄弥くんは間違ったことは言ってない。
だけど不死川の目は、柱の目そのもの。
「テメェ呼吸が使えないだろォが」
「ッ」
誰かに聞いたのか、見抜いていたのか。
玄弥くんの現状を把握していた。