第4章 柱《壱》
「でも…不死川さんと、宇髄さんは?」
そこへ言い難そうに問い掛けてきた蜜璃ちゃんの言葉に、そうだと思い直す。
あの二人もあの場にいたから、事の説明はしていなくても私のその行為は見ている。
「不死川は無闇矢鱈と周りにほら吹く性格ではないから、問題ないだろう。宇髄は──…」
だけど杏寿郎には想定の範囲内だったらしく、あっさりと頸を横に振った。
ただ不意にその声を萎ませたかと思うと、目線が檻の外へと向く。
「やはり問題ないな」
そしてうむと、納得したように頷いた。
外を見ながら。
なんで外?とつられて檻の外を見る。
開け放たれた藤の扉。
その先には、出口までは遠い、暗く長い通路が続いている。
まるで炭鉱跡地のような、そんな最低限の骨組みでしか作られていない土が剥き出した通路だ。
灯りはこの檻の出入口に置いてある大きめの行灯一つだけ。
その灯りに照らされた通路の橙の光が…ゆらりと、揺れた。
「なに俺のことを勝手に決め付けてんの? 煉獄サンよぉ」
揺れる影がそのまま人へと相成った。
通路の天井から逆さ吊りに現れたのは、あの忍者だ。
「宇髄さん、ずっと其処に隠れてたの? こっそり隠れて聞いてたの? 可愛い!」
「…嬉しさの欠片も感じねぇ言葉だな…」
きゅんッと胸を鳴らす蜜璃ちゃんにジト目を向けながら、くるりと反転した体が音もなく地面に着地する。
凄い。忍者だ。身のこなしがまるで忍者。
本物なんて見たこと無いけど、やっぱり忍者だったんだ。
「俺はその鬼が煮るなり焼くなりされようが、構わない。だが今の話を無視する程馬鹿じゃねぇ。そいつが煉獄の言…なんだその目きらっきらしてんなオイ」
「っ!…ふぐ」
「何が"ふぐ"だ今口枷付けてねーだろ!」
だ、だって。
忍者の行動に魅入ってしまっていた自分が恥ずかしい。
冷たい筋肉男なのに。
思わず顔を逸して取り繕うように漏らせば、即刻痛い突っ込みを貰ってしまった。
「煉獄の前ではすらすら喋ってたじゃねぇか、あ?」
そんなところから見られてたの…!
覗き見なんて趣味が悪い!