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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第11章 鬼さん、こちら。✔


──────────

「はぁ…なんか疲れた…」


 ようやく蝶屋敷の玄関を跨いだ時には、なんだか杏寿郎と手合わせした時みたいに疲労していた。
 精神が、と言いたいところだけど肉体も疲労。


「これくらいでヘバんな鬼だろうがァ」

「誰の所為だと…」


 あちこち叩き過ぎだからこの人は。


「いらっしゃ…わっ蛍さんっ?」

「あれっ今お昼ですよ!?」

「こんにちは!?」


 ぶつぶつと文句を言いながら草履を脱いでいれば、そんな陰険な空気を払うような可憐な声が三つ飛んできた。
 ととと、と可愛らしい足音を立てて出迎えたのは、十歳程の幼さ残るつぶらな瞳の三人娘。
 なほちゃん、きよちゃん、すみちゃん。
 隊士じゃないけど、蝶屋敷で働いている女の子達だ。


「こんにちは、なほちゃん。きよちゃん。すみちゃん」


 私も蝶屋敷で治療中、主にお世話をしてくれたのはアオイだったけど、なほちゃん達にも多少お世話になった。
 言葉使いも接する態度もきちんとしてて、幼いのに凄いなぁ偉いなぁとつくづく思う。
 何より鬼の私に最初は怖がっていたけど、アオイ達を見て笑顔で接してくれるようになった。
 色々と経験値を重ねた大人より、未経験としての余白が多い幼い子供の方が、案外早く受け入れてもらえるのかもしれない。


「今日は曇り空だからね。こういう日なら少しは外に出られるの」

「じゃあお昼でもお散歩できるんですね…!」

「それは素敵ですねっ」

「一緒にお散歩してみたいですっ」


 うん、素敵なのはなほちゃん達だな。
 ぱぁっと花が咲いたような可憐な笑顔が可愛らしい。


「機会があれば、ぜひ。今日は胡蝶に用事があるから、いいかな?」

「もちろ…あれ? 不死川さま?」

「不死川さまもしのぶさまにご用事ですか?」

「もしかしてまたお怪我をされたとか?」


 あ。
 なほちゃん達の癒し空間にほわほわして隣のおっかな柱の存在を忘れてた。

 きょとんとつぶらな瞳で見上げる三人を見下ろす不死川の目は…こっわ。
 相変わらず血走って見開いてる。
 ちょ、幼い女の子達にそんな目向けないで。

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