第11章 鬼さん、こちら。✔
「なんですか!」
「しつけ」
「なんですか!!」
「鯖の味噌煮だコラァ!」
鯖(さば)かいいね!
がしかし!
「濃いめの味だから副菜であっさりした和え物とか」
「だからしつけェ!」
「痛い!?」
ゴン!と頭に重い拳骨を喰らって、目の前に火花が散る。
結構な重さだった今の…ッ
絶対タンコブできた。
「いった…酷くない…食生活心配しただけなのに…」
「なんで鬼に俺の食生活心配されなきゃなんねェんだよ。いつから俺の家政婦になりやがった」
「おはぎばっか食べてたら体に悪」
「それ以上おはぎの"お"の字でもほざいてみろ斬んぞ」
「…健康第一プッ」
せめてもと告げればパチンと頬を叩かれた。
さっきの拳骨に比べれば随分軽いけど叩かれた。
おはぎ言ってないけど。
「顔が言ってんだよ煩ェ」
心読まないで。
「これじゃ蝶屋敷に着く頃には顔ぼろぼろになってしまう…」
「どうせすぐに治んだろうがァ。人外だろ」
「そういう言い方よくない」
ようやく掴まれた胸倉を解放されて、タンコブを擦りながら再び番傘を頭上に翳す。
人外って。差別用語。
「それ言ったら鴉だって鼠だって人外になるけど仲良くしてるでしょ」
「テメェが小さな体で偵察したり空を飛べるようになったら考えてやる」
「…む」
それはちょっと難しい。
体は小さくできるけど天元の忍鼠みたいには…ってちょっと待って。
「…あの」
「あ?」
「なんでついてくるの」
再び蝶屋敷へと向かう足取り。
それは私だけのものじゃなかった。
当たり前のように隣をついて歩く不死川に思わず凝視してしまう。
え、こっちに用事あったとか?
偶々だよね?
「俺はテメェの監視役だ忘れんな」
「それは忘れてないけど…え何、逐一監視するの? ついてくるの? 柱の仕事は?」
「テメェ如きで回らなくなるヤワな体はしてねェ。つぅか冨岡だって金魚の糞みたいにくっついてただろーがァ」
「義勇さんは別に…」
一緒にいても、空気は嫌じゃないし。
「ほお…冨岡はよくて俺じゃあご免被るってかァ?」
あ。
口角をつり上げた不死川の額に、ぴきりと青筋が入る。
こっわいその笑顔。
やっぱり義勇さんは地雷だな。