第11章 鬼さん、こちら。✔
「お生憎様、大変すっきりしておりますので気分は上々です」
昨夜、杏寿郎から血を貰ったばかりだし。
とまでは口にしなかったのに、相手は柱故なのか。
「誰の血肉を喰らいやがった」
鋭い勘で脅しにかかってきた。
その強面な顔面近付けて脅すのやめて下さいって本当…怖いから。
「誰だっていいで」
「また冨岡の野郎かァ」
「違います」
だから顔近いから!
視界ぼやけるくらい近過ぎるから!
義勇さん関連ですぐ喧嘩腰になるのやめて!
「じゃあ誰だ」
なんでいちいち構うかな…と思ったけど、私が鬼だからの一言に尽きるんだろう。
一歩身を退くと、仕方なしにと溜息を零した。
「師範の血を貰っただけです。今日はその報告と定期検査で蝶屋敷に行くだけ。これで満足?」
新しい注射器も貰わなきゃいけないし。
変に出し惜しみして長引かせるのもあれだし、さっさと要件だけ伝える。
これでお帰り頂け…あ。
「そうだ。おっかな…じゃない不死川さ…でもない不死川」
「ンだァその取って付けたような呼び方は。喧嘩売ってんのか」
まともに名前で呼んだことないから、ついいつもの調子でおっかな柱と呼びそうになった。危ない。
でもさん付けでなんて呼ばないからね、絶対。
「売ってないから。えーっと…昨日、何食べた?」
「あ?」
あ、会話の切り口甘かったかな。
でもこれくらいしか話題ないもんなぁ…。
「何企んでやがる」
「別に何も。ご飯の献立知りたいだけ。おはぎ?」
「なんで飯に菓子食うんだよ阿呆か」
「だっておはぎ好きでしょ」
「好きじゃねェ」
「いや好きでしょ。私が差し入れしたおはぎもなんだかんだ全部食べたって蜜璃ちゃんから聞」
「あれはァ! 虫の餌にした!!」
「カブト虫はおはぎ食べません!!」
いやわかんないけど!
蜜とか甘いの好きだから食べるかもだけど!?
てかカブト虫飼ってるの認めたなとうとう!
胸倉掴んでくるおっかな…じゃない不死川に、こちらも負けじと睨み返す。
怖いけど怖気付くのは相手に調子乗らせそうで癪に障るし、何より逃げたくない。
だって玄弥くんと約束したんだ。
「昨日の! 晩御飯は!! なんですか!!!」
私なりに、この顔面殺人鬼男を見るって。