第11章 鬼さん、こちら。✔
行き場の無い熱が内側に溜まっていく。
どうにか開放させたくて、出口を探すように目の前の体温を求めた。
「っ……蛍」
何処かで誰かが呼んでいる。
掠れて熱を含んだ声。
誘われるように顔を寄せれば、温かい吐息を感じた。
──そういえば。
前にもあった。
温かく濡れたそこから流し込まれた。
与えられたのは、甘美な血。
「俺がわかるか…? ほ──」
そこに誘われるままに唇を合わせた。
「ん…っふ、」
柔らかい。
舌を差し込み濡れたそれに絡める。
ちゅくりと唾液が口内に満ちて、飲み干せば血と同じに高揚した。
これ、気持ちがいい。
硬直して動かない体温をいいことにちゅくちゅくと味わっていたら、うなじに触れていたそれが急に動いた。
「んぅッ」
ぐっとうなじを引き込まれて、深く唇が交わる。
味わっていたはずのものに逆に舌を絡め取られて、熱く吸われた。
あ、体が、ぞわぞわする。
震えて身に力が入らない。
なのに体内の熱はどんどん増していく。
「は、ぁッ…ふっ」
呼吸が上手くできなくて、少し苦しい。
なのにその苦しさもなんだか気持ちよかった。
熱に浮かされた朧気な意識の中で、ただ目の前の猩々緋色に縋る。
合間に溢れた吐息さえ逃さないと言うかのように、目の前の体温が呼吸を奪う。
もっと。
もっと欲しい。
もっと気持ちよくなりたい。
その一心で求める体温に応えた。
口内を吸われ、うなじを擦られ、背中を撫でる体温が腰に下る。
それと共に熱も下半身に落ちていくように、ぞくりと肌が粟立つ。
だけど、それだけじゃ足りない。
口内は濡れそぼっているのに、喉の乾きは満ちない。
血が、欲しい。
もっと。
飲みたい。
喰べたい。
交わり絡み舌先で応えていたそこに、甘く噛み付く。
ぴくんと震えた体温が動きを止めた。
「っ…これ以上は、いけない」
「…ぅ…?」
あんなに求めてくれた体温が遠ざかる。
気持ちよさを打ち切らされて、両頬を何かに包まれた。
「俺の方が欲に負けてしまった…すまない」
ぼんやりと届く声。
よくわからなくて、視界いっぱいの猩々緋色を見返した。
「君にあげられるのはここまでだ」
あげ…?