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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第11章 鬼さん、こちら。✔



 熱い。
 でも、それが気持ちいい。

 自分の体の一部となり得るものが、糧となるものが、取り込まれ力に変わっていくのがわかる。
 乾いた砂地ような体に、水を与えられる感覚。
 ようやく手に入れたそれを貪欲に吸収していく。

 熱く体が高揚し、意識は呑み込まれるように揺らぎの中に落ちていく。
 それが堪らなく気持ちいいんだ。


「は…ん、ん、」


 杏寿郎の手を掴んで大きく傾けた容器の中の血を、残らず飲み干す。
 小さな容器ではあっという間に飲み終えて、足りないそれに飢えが増した。

 もっと、欲しい。

 血の匂いを求めて、自身の両手に顔を埋める。
 止血した際に付着した杏寿郎の血を、一滴残らず丁寧に舐め取った。

 ──おいしい


「蛍」


 何処かで誰かの声がした。
 顔を上げれば、猩々緋色が目に入る。
 …血の色みたいだ。


「俺の声は聞こえるか?」


 血の匂いが、する。
 遠くから届くような声は、不思議と心地良い。
 その色と匂いと声に誘われるように身を乗り出した。


「…蛍?」


 手足が思うように動かせない。
 制限されている動きに、四つん這いで匂いの下へと這う。
 赤い筋が厚い筋肉の上を伝っているのを見つけた。

 ああ、勿体無い。

 ひちゃりと、温かな肌の上に舌を這わす。
 ぴくりと反応する肌が硬直する。
 それでも構わず筋を辿るように血を舐め取っていけば、体温が身を退いた。

 嫌だ。
 逃げないで。

 追うように体温の中に潜り込んで、血の匂いが一層濃い肌へ顔を埋める。
 僅かな血を残さず舐め取っていけば、今度は体温は逃げはしなかった。

 頭の後ろを何かが包むように触れる。
 くしゃりと髪を撫でられて、そこから熱を帯びるようだった。

 ああ、それ。
 気持ちいい。

 体の内側は熱いのに、なんだかふわふわするような高揚感。
 ずっと浸っていたくなる。
 もっと触って。

 催促するように頬を体温に擦り付ける。
 それに応えるように、髪を撫でていた何かが首筋へと下る。
 つつ、とうなじを擦り撫でられる。
 ぞわぞわとした感覚が背中に満ちた。


「ぁ…っぅ、ん」


 体が震える。
 それ、好き。
 気持ちいい。

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