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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第4章 柱《壱》



「ふむ。彩千代少女を此処へ連れてきたのが冨岡だということは、真だったのだな!」

「私もお館様からの手紙で読んだわっ普通の鬼と違うところが見受けられたから、保護したって。冨岡さん素敵っ」


 きゅんッと胸を鳴らす蜜璃ちゃんの言葉に、思わずまじまじと渦中の彼を見てしまう。

 保護、なの?
 私を此処へ連れて来たのは、鬼への対策の実験台にする為じゃないの?
 私は、その為に生かされているんじゃないの?


「鬼舞辻の呪いから逃れていた希少な鬼だった。だから捕えたまでだ」


 初めて出会ったあの日、私に刀を振らなかった彼は「目的が変わった」としか言わなかった。
 何も説明してくれないから、何もわからなくて。
 それでも行く宛は何処にもなくて、あの場に留まるには哀しみが大き過ぎて。
 だから言われるがまま冨岡義勇について行った。

 そして此処へ連れて来られて胡蝶しのぶの研究につき合わされるようになって、ようやく自分の生かされた意味を悟ったんだ。
 鬼である自分に、手厚い対応なんてある訳がない。
 利用価値があったから、その為に生かされたのだと。

 現に今も、冨岡義勇は私が希少な鬼だからと言った。
 私を生かす価値がまだあったから、此処へ連れてきたんだ。
 …でも、私をただの"鬼"と見ていた不死川という男や、あの忍者とは、何かが違う。

 違う、けど、よくはわからない。
 彼の真意は、いつも読めない。


「その際にお館様と契を交わした。彩千代蛍が真の"鬼"になれば、その時は俺が斬る。それまでその命は俺が預かると」

「…ぇ…」


 そう、なの?

 驚き見上げていたその体が、初めて動いた。
 私の前に足を着くと、背を向けて立つ。


「だからお前に斬首させる訳にはいかない」


 その感情の読めない黒い眼は、真っ直ぐ杏寿郎へと向けられていた。

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