第11章 鬼さん、こちら。✔
つーか嫁達に対する気遣いか?
どんだけ嫁が好きなんだよあいつ。
「年頃の娘の…その、そういう事柄に安易に触れるのは…如何なものかと…」
「お前一体幾つだ親父通り越して爺さんか」
お前もその年頃の男だろーが。
ちったぁ興味示せ。
…いや興味があるからこんな反応なんだろうな。
普段の煉獄なら「この話は終わりだ」って即答してばっさり切るだろう。
興味がないことにはそういう奴だ。
だが今の煉獄は、口元を片手で覆って唯一見える目は…なんだその目。初めて見たぞオイ。
「こりゃあお前より蛍の方が大人かもしんねぇなぁ」
そっち方面では。
「大人だの子供だのそういう話では…」
「そういう話だ。精々継子に振り回されんなよ? お師匠様」
お前が蛍を特別視してるのはわかってんだからよ。
笑ってそいつの肩を叩けば、口元は隠したまま。
俺だから聞き取れるくらいの声で呟いた。
「…善処する」
頼りねぇなぁ。
まぁこんな奴だから、からかい甲斐もあるが背も押してやりたいと思うんだろうな。
あの蛍も煉獄相手なら初心な反応見せてたし。
良い勝負だってことか。
…ただ蛍に対して珍しい反応を示していたのは煉獄だけじゃない。
あの冨岡もそんな片鱗が見えた気がしていたが……あいつ、俺にはいつも通りだったもんな…。
煉獄にだけ加担するのは漢気ねぇなと思って、以前冨岡に個人的に声をかけたことがある。
蛍のことをあいつも好意的に見ているなら、煉獄にした分その背を押してもいいかと思って。
俺様って優しい奴。
『それでよ、蛍のことなんだが。お前があいつのことを特別視しているなら──』
『なんの話だ』
『いやだから、蛍のことを異性として』
『? 彩千代は異性だろう』
『…いやそういうことじゃなくて』
『???』
『……やっぱいいわ』
あのキョトン顔はマジで何もわかってねぇ顔だったな…。
煉獄とはそれなりに言葉や意思を交わしてきた過去があるからあいつのことは大方汲み取れる。
だが冨岡のことは時々全くわからねぇ。