第11章 鬼さん、こちら。✔
歩み寄ってもばっさり断ち切ってくることなんざ日常茶飯事だし、どうやら蛍には興味を持っていても俺達柱のことは全く興味ないみたいだし。
結局あの時は曖昧で気まずい空気のまま会話も終わっちまった。
なんだかなぁ…。
「あいつも煉獄くらい善処してくれたらなぁ」
「? なんの話だ」
蛍にって言うより、俺らに。
❉
「後藤さん、前田さん。沢山の食材ありがとうございました」
「いやいや。資金は本部から出てるし。オレらは運び屋しただけだから」
それでも量が量だ。
後藤さん達に運賃を払いたいくらい。
「私の方こそお礼を言わせて貰いたいですよ。なんせ蛍ちゃんの一張羅を作ることができるんですから」
大きな眼鏡の奥の瞳は、これ以上ないくらいにこにこしてる。
前田さんが嬉しそうにしてるならいいかな…。
「では早速、体の隅々まで寸法を測」
「なんでだよ!」
「ゲベプ!?」
あ。
本日二度目の後藤さん鉄拳が入った。
「何を…後藤…普通のことを言っただけだろう…!」
「寸法なら以前菊池が使った型紙があるだろ!」
あ。
予想外の名前が後藤さんの口から飛び出して、はっとする。
同じくはっとした後藤さんの目が私を捉えた。
ここで変な反応をしたら空気が悪くなりそう…でも、折角の機会だ。
「あの、最近菊池さんを見かけないんだけど…元気にしてるかな」
何度か足を運んだ隠の隊舎。
でも前田さんには何度も会っているのに、同じ縫製係の菊池さんには会っていない。
会って何を話すなんて決まってないけど、ずっと心に引っ掛かっていた。
アオイまで負傷させたことを後悔していたって聞いたし…まだ隠として働いているなら、此処に来れば会えるかなって…。
「ああ、まぁ…元気にしてるよ。あいつも」
「見かけないのは仕方のないことですけどねぇ」
「え?」
「ばっ…」
「だって菊池は左遷しましたから」
さ…せん?
させんって…左遷?