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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第11章 鬼さん、こちら。✔



「あ、テメ。今俺のこと忍者呼ばわりしただろ」

「…心の中読まないで下さい」

「じゃあ読める顔すんなやわざとだろーが」


 だって天元相手に取り繕う気もないし。
 そんなの疲れるし。
 こういう場所でなら体裁くらい気にしてあげるけど。


「ったァく、俺には本当に遠慮がねぇよな…まぁいいけどよ」


 いいんだ。
 結局どっちなの。


「仕方ないですから音柱様にも会いに行ってあげます。ので、奥さん達と話させてください」

「なんで上から目線なんだよなんだその溜息。てか音柱様なんて他人行儀な呼び方ヤメロ」

「じゃあ宇髄様」

「様付けんな」

「…宇髄さん?」


 やれやれと肩を竦めて提案すれば、即突っ込まれる。

 天元が言ったんでしょ。
 だから会いに行ってあげようとしてるんでしょ。
 勿論奥さん達が第一だけど。

 というか初対面で「崇め讃えろ」なんて言ってきていた人が、様呼びするなとか。意外。
 思わずまじまじとその顔を見上げてしまう。


「なら宇髄さんの奥さん達に会いたいので時間を下さい」


 改めて言い直してみるけど、目的は結局のところ同じだ。

 鬼殺隊は男性の比率が大きい。
 だから同性の、それも歳が近い女性と話せる機会は貴重だ。
 奥さん達が幾つかは知らないけど。

 それと…ちょっぴり訊いてみたいこともあるというか……杏寿郎のことで。

 雛鶴さん達なら既婚者だから、尚の事そういうことに詳しそうというか。
 そういうことというのはそういうことなんだけど…その、まともな相手とそういうことになったことないからよくわからないというか。
 そういうこととはそういうことなんだけど。


「そういう姿勢なら受け付けねぇな。俺の嫁も暇じゃないんで」

「えっ」


 まさかこの流れで拒否されると思ってなかったから、驚いて声が出た。
 慌てて二度見すれば、私の肩にもう一つ太い腕が乗る。
 両肩に重い筋肉を乗せてきて、身を屈めて顔を寄せた天元がニィと口角を上げて嫌味に笑った。

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