第11章 鬼さん、こちら。✔
熱くなる顔に思わず口を開閉させれば、目を丸くした天元が急に面白そうに笑っ…何!?
「へぇ〜てっきり一方的なもんかと思ってたが…強ちそうでもねぇか。面白ぇ」
「な、何が」
「いんや?」
いやって顔してないでしょ。
何そのニヤけ顔いけ好かない。
「良かったなぁ煉獄。他に継子はいねぇから、同じ屋根の下に二人っき」
「俺が荷造りをしよう!!」
「あ。」
威勢よく天元を遮った杏寿郎が、手早く山のような食材をまとめていく。
広げようとしていた風呂敷は、あっという間に掻っ攫われてしまった。
「くっくく♪ 面白ぇ」
「…あんまり師範で遊ばないで下さい」
一人くつくつと楽しそうに笑っている天元をジト目で見上げる。
そうすれば切れ長の目が面白そうに…あ、まずい。からかう対象が私に変わった。
「お前もどうよ、煉獄との生活は。楽しいか?」
「以前の監獄生活に比べたら、なんだって楽しいですけど。てか重い。邪魔です」
のしりと筋肉のついた太い腕を私の肩にかけて、悪絡みしてくる。
筋肉が重い。キラキラの装飾が視界を遮る。
邪魔なんだけど。
逃げ出したいけど、ここで逃げればまた杏寿郎が被害に合いそうだしなぁ…仕方ない。
「それより雛鶴さん達は元気にしてますか?」
これ以上悪絡みが悪化する前にと、別の話題を振ることにした。
奥さん達の話なら天元も喜んでするから。
「ああ、まきをも須磨も元気にしてるぜ」
「また料理を教わりに行きたいので、今度お邪魔してもいいですか」
杏寿郎の継子になってから一度だけ、挨拶がてらお邪魔しに行ったことがある音柱邸。
毎日杏寿郎のご飯を作ることになった話をしたら、色んな手料理を伝授してくれた。
人妻なだけあって手際が良いし、人数が多いご夫婦だから簡単に量を作れる方法も教えてくれたし。
勉強になったなぁ…また伝授して欲しい。
「なんだよ。俺じゃなくて嫁達に会いに来るのか?」
「勿論ド派手にそうですけど」
「地味に嫌味な即答すんな」
じゃあ自分も嫌味な絡み止めればいいのに…面倒臭いなこの忍者。