第11章 鬼さん、こちら。✔
「やあ、蛍ちゃん!」
「こんばんは」
「また食材かい? いつもお疲れさん」
「こちらこそお世話になってます」
擦れ違う隠さん達に、挨拶がてら頭を下げる。
杏寿郎と天元には緊張している様子の隠さん達も、幾度か会話した人達は私には笑顔で挨拶をくれるようになった。
「なんだありゃあ…蛍ってあんな社交性高い奴だったか?」
「む。俺も初めて見た」
後ろで交わされる柱二人の会話に、そうも思うものかと内心納得する。
今まで柱ばかり相手してきたから、だからこそわかる隠さん達の安心感というか。
変な圧はないし変な性格もしてないし(前田さんみたいな人も偶にいるけど)変な暴力も向けてこない。
柱に比べたら、そりゃ笑顔も多くなります。
「ほら、これだ。全部持って行けるか?」
「あ、お砂糖とお味噌!」
「前は手配できなかったからな。量多めにしといたよ」
「ありがとうっ」
「それとこれもな」
案内された台所には、既にこんもりと山を作るようにして食材が積まれていた。
前回頼んでいたお砂糖とお味噌の他にも、お米に大根に人参に牛蒡…あ、お肉やお魚も! 嬉しいな。
「あと忘れちゃならない、さつま芋」
「わぁいっぱい!」
土が付いたままの新鮮なさつまいもが幾つも入った麻袋を渡されて、つい顔が綻ぶ。
「さつまいも?」
それを聞き逃さないのは流石だと思う。
「はい。師範の好物ですしね。これはお米並に外せません」
「うむ…」
「……」
「……」
「さつまいものお味噌汁、また作りましょうか」
「! いいのかっ?」
やっぱり。
無言でそわそわと麻袋を覗く杏寿郎に、すぐにピンときた。
杏寿郎、さつまいも料理で一番好きなのお味噌汁だもんね。
うん、私もお味噌汁なら毎日でも飲める。
「昨日したばかりだけど、また作りますよ」
「ならば俺も使ってくれ。なんでもしよう」
「本当ですか? ならまた一緒に作って下さい」
「うむ!」
「…なんつーか…」
和気藹々と杏寿郎とご飯の話をしていれば、じっとこっちを見てきていた天元が…何?
「夫婦かよお前ら」
「ふ…ッ!?」
「ッ!?」
な、な、何を言ってるのかな!?