第11章 鬼さん、こちら。✔
訓練がない日もない日で、主にやることは継子としての役目が多い。
自主訓練や屋敷内の掃除や食材の管理や鎹鴉のお世話や。
掃除をするにしても広い屋敷だし、杏寿郎を起こさないよう邪魔にならずにやらなきゃならないし。
割と訓練がない日も忙しいんだけど…もう一つ、自由にできることがある。
「杏寿郎」
「ん?」
「折角だからゆっくり休んだらいいのに…本当について来るの?」
「ああ! 駄目か?」
「駄目じゃないけど」
それは鬼殺隊本部内での外出。
あんなに何処に行くのもお館様や柱の許可が必要だったのに、今では自由に外出できるようになった。
大きな風呂敷を用意して外出の準備をしていれば、まだ就寝時間じゃない杏寿郎もついて行くと言い出した。
まぁ無闇に一人で出歩くよりは、鬼殺隊の誰かがついてくれた方がいいよね…義勇さんもまだ私を見守る立場らしいし。
まさかのあのおっかな柱も。
何より目的地はあそこだし、鬼である私だけより柱である杏寿郎がいた方がいいかもしれない。
私の為にじゃなく、あそこの人達の為に。
「して蛍。それはなんだ?」
用意した風呂敷とは別の包みを持って目的地へと向かう。
中身が気になるんだろう、相変わらず貫くような強い目線が興味深く包みを見ていた。
「おはぎだよ」
「おはぎ」
「うん。お裾分けというか、お礼というか」
「不死川の所に行くのか?」
「いやまさか」
おはぎと言えばおっかな柱って、皆定着し過ぎてない?
そう言う私もそうだけど。
不死川おはぎはもう終わりました。
一週間、無事届けたので。
…いや無事じゃなかったな色々と。
「では何処へ?」
「行けばわかるよ」
お陰ですっかりおはぎ作りは得意になってしまった。
前に会った時に食べたいと言ってくれたから、ついでだし持っていこうと思っただけ。
不思議そうに頸を傾げている杏寿郎に笑顔を返して、足取り軽く進む。
おっかな柱の所に向かう時とは気持ちが天と地の差だ。
早く行こう。