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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔



「お館様はああ言ったが、提供は臨機応変。つーことは俺がやんのも自由ってことだ。きちんと飲んで貰うぞコラァ」

「ぇぇ…てかなんでそんな急に協力的なの…怖い」

「逃げんな嫌がんなまた口に突っ込むぞ」


 ピキピキと青筋を立てて脅す実弥に、勘弁して欲しいとばかりに後退る蛍。
 鬼を滅する為に自分の血を流すことに躊躇のなかった実弥が、今更体に傷を付けることに迷いなどない。
 更に鬼に与える為に血を流すことに固執するのは、恐らく。


「協力的ってか、ありゃ冨岡に対抗心持ってるだけじゃねーの?」

「持ってねェよ」


 即答する程に反応する、かの水柱の存在がありそうだ。


「へぇ? だってよ、冨岡」

「…俺の血は稀血じゃないから提供し易かっただけだ。不死川は鬼狩りで血を流してきた分、無理には」

「それ以上ほざくと叩っ斬んぞ」

「…ド派手に対抗してんじゃねーか…」


 ぼそりと呟く天元の言葉通り。何かと衝突するこの二人は、同年齢であり義勇が先であるが鬼殺隊入隊歴も大きくは変わらない。
 しかし正反対な性格と行動がどうにもこの亀裂を生んでいるようだ。


「いいかァ。俺の務めは彩千代蛍の監視だ。その延長線上でテメェの愚行も見抜いてやる。覚悟してろォ」

「俺は…馴れ合うつもりはない」

「俺もねェよクソが」

「いやもう…馴れ合わなくていいから喧嘩もしないで下さい」


 ぱちぱちと互いの視線の間で火花が散っている幻覚さえ見えそうだ。
 義勇は興味のない顔をしているが、そんな煽る言葉を吐くものだから実弥も反応するのだと蛍が力なく間で声を挟む。


「あ? 鬼がなに偉そうに言ってやがる」

「別に偉そうになんて」

「そうだな! 蛍少女の言う通りだ!!」

「わっ」

「声でっか」


 後ろから轟く声量の大きさに、思わずぴたりと皆の動きが止まる。
 呆れ顔で見る天元の目先には、蛍の後ろで腕を組み胸を張る杏寿郎がいた。

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