第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔
──────────
「ふむ…成程。己の〝影〟か」
「そりゃド派手に鬼の能力だろ。呼吸法にそんな技はねーぞ」
「で、でも蛍ちゃんは人を喰べてないのに…異能なんて持てるの?」
「彩千代さんは普通の鬼とは違うところが髄所で見受けられます。禰豆子さんも自身の血を爆ぜる異能を持っていますから、不可能ではないかと」
アオイを救った出来事を辿久しく伝えた蛍に、柱達は興味深く耳を傾けた。
禰豆子という異例中の異例である存在がいた為に、蛍の異能も大した反感はなく受け入れられた。
「その能力、今此処で見せてみろ」
「えっ」
「なんだ。できないのか?」
「…その…」
「蛍少女の話によれば、能力をまだ自在に操れはしないようだ。伊黒の気持ちもわかるが、まずは技を磨いて安全を保証した上でもいいのではないか?」
「うん、そうだね。蛍もようやく全治したばかりだし。心身共に万全の状態で小芭内に見せてあげるといい」
耀哉が認めれば小芭内も強くは言えない。
渋々と口を閉じる小芭内とは打って代わり、杏寿郎は深々と頭を下げた。
「して、お館様! その蛍少女の異能力、己の下で磨かせてあげたいのですが。よろしいでしょうかっ?」
「勿論。杏寿郎は蛍の師範だからね。君が導いてあげるといいよ」
「は! 感謝致します!」
鬼としての力を伝えることに不安はあったが、当主含め柱達は認めてくれた。
内心ほっと安堵する蛍に、耀哉が皆に聞こえるように改めて告げる。
「これより彩千代蛍は、炎柱・煉獄杏寿郎の継子として鬼殺隊に迎え入れる。皆、異論はないね?」
「「「御意」」」
「蛍も。日輪刀は持たせられないけれど、君も私の愛しい子供だ。その力を、アオイを救ったように人々の為に役立ててくれると嬉しい」
「は、はいっ」
「義勇は引き続き蛍の用心を、実弥は新たな蛍の後見を、それぞれ頼むよ」
「「御意」」
とんとん拍子に進む話は、蛍が拍子抜けする程すんなりと通った。
以前杏寿郎に申し出された通り、今後の身の置き場は炎柱邸となる。
文字通り冷たく寒い檻の中から、大きく一変したのだ。