• テキストサイズ

いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔



 縦に割れた瞳孔が驚きに満ちる。


「ほ…んと、に?」

「ああ」

「こんな、半端な私でいいの…?」

「…お前は、人でもなく鬼にも成りきれていないと言ったな」


 義勇の視線が再び落ちる。
 緩く手首を握ったまま、掬うように掌に乗る一回り小さな手。
 それは鋭い爪を持つ、紛うことなき鬼の手だ。
 しかし義勇の手を一切傷付けていないのは、常に蛍が手元で触れることに配慮を向けているから。
 その些細な違いが、確かな証でもある。


「俺には、人でもあり鬼でもあるように見える。だから衝突もするし、心と体にすれ違いも起きる」


 完全に鬼に染まった、人々を脅かす悪鬼とは違う。
 また禰豆子のように、鬼の顔も人の顔も薄めている訳でもない。


「それが彩千代蛍だ」


 そのどちらもを明確に手にしているのが、唯一の目の前の鬼だ。


「そんな彩千代だから他の柱達も認めたんだ」

「え?」

「柱合会議で出た議案の一つに、彩千代の鬼殺隊での処遇があった。一人でも柱がお前を悪鬼と認めれば、その頸は即座に跳ねられる」

「……それ…」

「結果は既に出た。お前が寝ている間に」


 握っていた掌に力が入る。
 強張っているのは、緊張している証か。
 その手を柔く握り返して、義勇は数日前の結論を伝えた。

















「満場一致だ。柱は、お前を生かすことにした」

/ 3464ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp