第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔
じくじくと体の内側から、常に発火しているような感覚。
その炎が内から柔らかで無防備な細胞を細かに貫き、常に痛みを与えてくるようだ。
眠りから目覚めた蛍は、全身火傷からくる痛みに眉を潜めた。
しのぶの鎮静剤はほとんど効いていない。
睡眠剤ならと投与された薬も効かなかった。
あんなにも人の血肉は欲するのに、それ以外は全て異物だと排除する。
これではまるで、
(人じゃ、ない)
自嘲しそうになった。
そんなこと、わかり切っていたことなのに。
「しかし折角目覚めたんだ。筆談で構わないから、あの火事の中で起こしたことを教」
「何言ってるんですか! しのぶ様に知らせて睡眠剤の具合を確かめることが先決です!」
「む。そう、だった」
「そうです!」
普段通りの様子を取り戻したアオイが、炎柱にも臆することなく声を張る。
「彼女を看ていて下さい。すぐに戻りますから」
「うむ」
「絶対安静ですよ!」
「うむっ」
腕組みの姿勢のままこくこくと頷く杏寿郎に、念を押して部屋を出ていく。
しっかり者のアオイに蛍が感心していれば、ふと強い視線を感じた。
見上げれば、じぃっとこちらを見てくる見開いた瞳が二つ。
「…何…?」
「喋るな。喉を痛めるぞ」
「平気、だって…それに、もう遅いよ…たくさん、話したから」
「む」
「それに折角、杏寿郎が、来てくれたんだし……来ないかと、思った」
「…む?」
「蜜璃ちゃん、や…義勇さんや…あの、不死川実弥、まで、来たのに…杏寿郎の姿は、なかった、から」
「ああ。積もった仕事が立て込んでいたんだ。少々手を抜いてしまっていたからな」
「杏寿郎が?…めずらし」
どんな鍛錬でも手を抜かなかった杏寿郎なら、柱の仕事も全力で挑むはずだ。
彼にしては珍しい失態だと、まじまじと蛍の目が向く。
強い眼力は依然変わらず。
ただそれは気まずそうに、その目はそろりと蛍の目線から外れた。
「…気になって仕方なかったんだ」
「気に、なる…?」
「君の、ことが」