第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔
「わかりました…アオイ、後はお願い。念の為にカナヲを彼女の傍につかせて」
「はい」
柱合会議はまだ終わっていない。
地下牢の崩落と火事は大事だが、半年に一度の会議も決して外してはならないものだ。
その間に問題が起きないようにと、やむを得なく継子のカナヲを呼ぶ。
「しっかし会議なんてやれるのか? 甘露寺なんか特に」
「伊黒が傍についてんだろォ。どうにかなる」
この場にいる柱は、耀哉の護衛に付いている行冥を除いて六人。
蛍の散々たる様に狼狽してしまった蜜璃は、小芭内が敢えて蛍から離した。
彼女も柱の一人である。
会議ができない程の失態は見せないだろう。
「煉獄」
「……」
それとはまた別に、蛍を発見してから一言も発さない杏寿郎の姿にようやく義勇が目を止めた。
皆が会議の為に外へと足を向ける中、杏寿郎はカーテンに仕切られた蛍へと目を向けたまま。
結んだ唇も、静かな眼差しも、微動だにしていない。
「お館様が呼んでいる」
「……ああ」
ようやく聞いた第一声は、聞き慣れたいつもの賑やかで張りのある声ではなかった。
振り返った杏寿郎が、静かに踵を返す。
その目は義勇を捉えることなく、ただ先へと向いていた。
「今行く」