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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔



「──迷うこともない」


 最初に声を上げたのは、一歩前に進み出た体。
 燃えるような強い双眸を持つ煉獄杏寿郎だった。


「お館様の言う通り、自分自身の眼で彩千代蛍を視ました。彼女は鬼である前に"人"だ。一度犯した過ちを悔い、二度と起こさぬよう己を踏み越え精進しようとしている。その背を押さずしてどうすると、自分の心に従いました。お館様が認めて下さるならば…彩千代蛍を、この炎柱煉獄杏寿郎の継子として迎え入れたい」

「継子だァ?」

「マジで言ってんのか」

「大真面目だ!」

「杏寿郎なら蛍を受け止める器となってくれると信じていたよ。あの子が望むなら、杏寿郎の継子として認めよう」

「! それは真ですかッ」

「しかしそれは…」

「異論があるのかな?」

「…ぃぇ、」


 またも口を噤む義勇は、杏寿郎とは反対に嬉々とした表情を浮かべていない。
 しかし耀哉に向けて頭を下げると、今度は言葉を呑み込まなかった。


「…どんな形であれ、自分も彩千代蛍の延命を望みます。あれは竈門禰豆子と同じです。鬼という理由だけで切り捨てていい存在ではありません」

「うん。じゃあ義勇も杏寿郎と同じ意見ということだね。他の皆は?」

「そうだな…その禰豆子って鬼のことはよく知らねぇが、蛍となると別だ。俺も蛍を鬼殺隊で保護することには同意です。あいつがまた人を喰らわない限りは」

「はいっ! 私も賛成っ賛成です! 蛍ちゃんが人に近付こうとたっくさん頑張ってきたの見てきましたから!」


 ふむ、と考え込む顔で腕を組む天元の隣で、ぴょこぴょこと挙手した腕を振る蜜璃が頬を高揚させる。


「鬼は信用していない。……が、あいつがその鬼と同じ畜生に成り下がらないと云うのなら、考えてやらなくもない。一度くらいの機会なら、与えてやってもいい」

「俺は…まぁ、どちらでも。皆の意見に従います」


 蜜璃を視野の隅に入れながらぼそりと告げる小芭内に、興味のない表情はしているもののふと思い出すように周りを見て無一郎が頷く。


「ふふ、嬉しいよ。皆が鬼の枠だけに因われず、蛍を見ていてくれたようで」


 望んだ答えに耀哉の頬が和らぐ。
 残る柱の答えは、三つ。

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