第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔
「鬼殺隊の柱達は当然抜きん出た才能がある。血を吐くような鍛錬で自らを叩き上げて、死線を潜り、十二鬼月をも倒している」
蜜璃一人だけではなかった。
爛々とした目で頷く杏寿郎。
頸を傾げる無一郎。
無表情に立つ義勇。
その手を振り払い威嚇する小芭内。
木箱に戻る禰豆子を唖然と見下ろす実弥。
彼らを除く柱達が、笑いに耐えるように一様に口を結ぶ。
「だからこそ柱は尊敬され、優遇されるんだよ。炭治郎も口の利き方には気を付けるように」
「は…はい」
「それから実弥。小芭内。あまり下の子に意地悪をしないこと」
「…御意」
「御意…」
やんわりとした口調ではあるが、鬼殺隊当主である産屋敷耀哉のお咎め。
静かに頭を下げる二人に、先程までの気迫はなかった。
「さあ、炭治郎の話はこれで終わり。下がっていいよ。そろそろ柱合会議を始めようか」
「でしたら竈門君は私の屋敷でお預かり致しましょう」
「…え?」
笑い耐えるように俯いていたしのぶが、即座に顔を上げてにっこりと微笑む。
その提案に間を置いて炭治郎は頸を傾げた。
何故、蟲柱の屋敷なのか。
しかしそこに疑問を投げる前に、パンッと彼女が手を打つと陰から隠が飛び出した。
「はい連れて行って下さい」
「前失礼しまァす!」
「わ…!?」
柱達の前を横切るのが酷く恐縮という顔で、猛ダッシュの末に炭治郎の体をひっ攫う。
「では柱合会議を…」
「ちょっと待って下さい!」
「は!? 何…っ待って何してんの!?」
「その傷だらけの人に頭突きさせてもらいたいです絶対に!」
「ちょっ何言ってんの! 黙れお前!」
「禰豆子を刺した分だけ絶対に!!」
「やめろそれ以上阿呆なことぬかすな! マジ黙って!!」
しかし石のように硬い頭を持つ竈門炭治郎。
その思考も、石並に頑固で早々曲がらない。
屋敷の太い柱に全身でしがみつくと、実弥だけは許さないと声を荒げた。