第4章 柱《壱》
太陽のように、この人の腕の中は温かい。
異性の腕の中で安心できたことなんて、初めてだった。
「そうか…ならば一緒だな」
声を出して、杏寿郎が笑う。
「俺も君が怖くなくなった」
…そうだ。杏寿郎も、私のことを怖いと言っていたっけ。
得体の知れない鬼だって。
でも、口枷もしていない血塗れの私をこうして傍に置いてくれるのは…それだけ、信用してくれてるってことなのかな…。
「全てとは言わないが、今日のことで多少とも君のことがわかった気がする。やはり俺の見てきた鬼とは違った」
僅かに体を離して、強い目が私を見下ろす。
「外に連れ出したのは俺だ。よって今回のことも、全ての責任は俺にある。不死川の言ったことは案ずるな、俺がお館様に君の延命を頼み申してみる!」
そうだ、私、ちゅうごうかいぎ?とかいうもので死刑にされるって…
「私もっお館様に今回のことを伝えるわ!」
勢い良く挙手をして賛同してくる蜜璃ちゃんに目を向ければ、両手の拳を握って力説してくれた。
「蛍ちゃんが稀血にも耐えたことと、口枷を外したらとっても可愛いこと!」
「……」
もう一つは、重要なのかな…?
「そういえば、まれち、って…?」
「説明しよう。しかしその前に、この傷を手当てしないとな。筋肉まで見えているぞ」
「…痛い…」
「そうだろう! よし戻るぞ!」
改めて自覚をすれば、強い痛みが戻ってくる。
鬼だからいずれは勝手に再生するのに、杏寿郎は迷うことなく手当てを勧めてくれた。
無事な方の手を握り、力強く引っ張ってくれる。
やっぱりその手は、とても温かかった。