第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔
「顔触れが変わらずに半年に一度の柱合会議を迎えられたこと、嬉しく思うよ」
初見である炭治郎は、蛍と等しく耀哉の顔面を半分以上覆う痣痕に目を止めた。
「ぐッ!?」
それを止めたのは、炭治郎の頭を鷲掴んだ実弥だった。
半ば殴り付けるような勢いで、炭治郎の顔を玉砂利に叩き付ける。
やはり先程顔面に頭突きを喰らわせられたのはまぐれだったのかと思える程、炭治郎は一切の抵抗をする暇がなかった。
それでもどうにか顔を上げようとして見えたのは、一斉にその場に一列に片膝を付く柱達。
「お館様に置かれましても、ご壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」
「ありがとう、実弥」
「畏れながら柱合会議の前に、この竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士についてご説明頂きたく存じますがよろしいでしょうか」
「そうだね。驚かせてしまってすまなかった」
二人の白髪の娘達に付き添われて座敷に腰を下ろす。
先程までの暴君ぶりが嘘のように礼儀正しく当主に対応する実弥に、耀哉もまたあっさりとそれを認めた。
「炭治郎と禰豆子のことは私が容認していた。そして皆にも、認めて欲しいと思っている」
一斉に息を呑む柱達の間に緊張が走る。
しかしすぐに各々が我を突き通した。
「嗚呼…例えお館様の願いであっても、私は承知し兼ねる…」
「俺も派手に反対する。鬼を連れた鬼殺隊員など、おいそれと認められない」
真っ先に否定を述べたのは、岩柱の行冥と音柱の天元だった。
「私は全てお館様の望むままに従いますっ」
「俺はどちらでも…すぐに忘れるので…」
否定も肯定も成すがままは、恋柱の蜜璃と霞柱の無一郎。
「「……」」
揃って無言を通したのは、蟲柱のしのぶと水柱の義勇。
「信用しない。信用しない。そもそも鬼は大嫌いだ」
「鬼を滅してこその鬼殺隊です。意に反している」
冷たい声を向けるのは、蛇柱の小芭内と風柱の実弥。
「心より尊敬するお館様であるが理解できないお考……むぅ」
同じく否定を述べようとして声を止めた者が唯一、一人。
炎柱の杏寿郎だった。