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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔



「禰豆子は…ッゲホッ!」

「怪我が治った訳ではないので無理はいけませんよ。この水を飲んで下さい。鎮痛薬が入っているため楽になります」

「フン。下らない妄言を吐き散らすな。そもそも身内なら庇って当たり前。言うこと全て信用できない。俺は信用しない」

「嗚呼…鬼に取り憑かれているのだ…早くこの哀れな子供を殺して解き放ってあげよう…」


 炭治郎に優しく接しているのはしのぶだけで、木の上に寝そべりねちねちと嫌味を向けている小芭内と、合掌しながら涙している行冥の突き放すような言葉に、ようやく無一郎も理解した。


(そうだ。鬼を連れた隊士がいたんだっけ)


 この鬼殺隊で捕えている彩千代蛍とは違う。
 柱達の監視も何もない状態で、鬼である妹を連れている隊士がいたのだ。
 その為捕え、この場に連れてきた。

 ようやく思い出した出来事に、ぽんと小さく掌を打つ。


「俺は…っ禰豆子を治す為に剣士になったんです! 禰豆子が鬼になったのは二年以上前のことなので、その間禰豆子は人を喰ったりしてない!」


 どうやら禰豆子という鬼になった妹を人に戻す為に彼は奮闘しているらしい。
 というところまでは、無一郎も理解した。


「話がさっきから地味にぐるぐる回ってるぞ、阿呆が。人を喰ってないこと、これからも喰わないこと。口先だけでなくド派手に証明してみせろ」


 冷たい声色でぴしゃりと返す天元に、炭治郎の勢いが止まる。
 口先だけならなんとでも言えるのだ。
 それだけでは何も理解は進まないことを、その場にいる柱全員が知っていた。


「あのぉ…でも疑問があるんですけど…お館様がこのことを把握してないとは思えないです。いらっしゃるまでは、とりあえず待った方が…いい…かと…」


 おずおずと切り出す蜜璃の言葉に全員の目が向く。
 一斉に注目を浴びて顔を鮮やかに染めると、蜜璃は忽ちに俯いてしまった。

 柱合会議と相成り鬼殺隊の主である産屋敷邸に呼ばれたが、まだ肝心の当主は姿を見せていない。
 その中では炭治郎の処分も延命も、柱の一存だけでは決められないのだ。

 蜜璃の言うことは正しい。
 故に反論する者はいなかった。

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