第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔
現したのは、いいけど。
「…政宗?」
巣箱から出てきて颯爽と翼を広げ…たまま、ばさばさと上下に振るだけ。其処から飛び立とうとしない。
…何してるのかな?
「ちょっと。ねぇ政宗」
「カァ」
「いやカァじゃない。話聞いて。神崎アオイを連れ戻してって」
「カァッ」
「だからカァじゃない! 今は反抗してる場合じゃないんだって言うこと聞いて!」
「カァア!!」
全く聞かないな!!
どんなに急かしても政宗の態度は変わらず、寧ろ格子を越えて檻の中に入ってくる始末。
そんなことしてる暇じゃないんだって…!
「窓!」
「いやだからカァ…え?」
「外!」
「え? 何? 待って喋った!?」
ま、待て待て待て。
今、喋ったよね?
政宗喋ったよね!?
単語しか口にしなかったけど、確かに窓って言ったよね外って言ったよね!?
「やっぱり喋れたんじゃ痛い!」
肩に停まる姿にまで感動を覚えたのに、即座に巨大な嘴にがつりと頭を突かれた。
待って結構痛い。
「な、何…っ」
「外! 火!」
「ひ?…え、火?」
ようやく政宗が言わんとしていることがわかった。
というよりも目で見て悟った。
それは唯一外と繋がっている小窓。
ぱちぱちと鳴る音を辿れば、唯一の外の世界からそれは迫ってきていた。
「なんで火!?」
ぱちぱちと音を立てて燃え上がっているのは、強い赤と橙。
小窓の外から、大きな火が顔を覗かせていた。
「さっきの地震で火事が起きたとかっ?」
でも小窓の外に燃えるものなんてあったっけ?
や、外の状況なんてわからないけど…でも状況が悪化していることだけはわかる。
「駄目だ、此処にある水だけじゃ消せない…っ」
忽ち大きく燃え盛る炎に、黒い煙が檻の天井に充満していく。
桶の水くらいじゃ消えないくらいに。
まずい。
鬼の私ならまだ火達磨になっても命は助かるけど、政宗と神崎アオイはそうはいかない。
もし本当に通路が崩壊していて、唯一の出口が塞がれていたとしたら。
「す、すっごくまずい状況なんじゃないこれ…!」
なんでこんな大事な日にこんな不運が重なるかな!?
やっぱり初詣の大凶が効いてる気がする!