第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔
「想定外だった…」
「は?」
「いえこっちの話です…」
「さっきからぶつぶつと…気味の悪い」
ぶつぶつ言いたくもなるんです…。
だってこの半年間、この会議の為だけに生きてきたと言っても過言じゃないのに。
まさか参加拒否されてたなんて。
や、元から私に参加資格なんてなかったんだろうな…。
そうだよね鬼だもんね…杏寿郎が継子として認めてくれたって、岩柱の継子である玄弥くんが参加できないんだから。
私が参加できるはずもないよね…。
なのにあんな当然のように、玄弥くんに上から目線で提案したなんて。
「恥ずか死にたい」
「さっきから根暗発言が多いんですが!?」
色々とアレで精神的打撃が大きいんです。
ちょっと大目に見て下さい。
「全く! 口を動かす暇があるなら手も動かして下さいッ」
「あ、ハイ」
テキパキと檻の格子越しに働いている姿を見て、畳に突っ伏していた体を起こす。
此処は見慣れた藤の檻。
そして格子の外には世話役の神崎アオイ。
最初こそ全部任せっきりだったけど、今は檻の周りを掃除してくれる代わりに、私が檻の中を掃除している。
柱会以降、物が増えたし…綺麗にしておかないと、また天元に汚いって小言言われる。
神崎アオイが用意してくれた濡れ雑巾で畳の上を拭く。
それと小さな机と棚と衣紋掛けと小窓…には近付けないから、そこは回避。
小窓からは、明るい日の光が差し込んでいるから。
それは今が日中であることを示していた。
義勇さん達が本部に戻ったのは夜明け近くだったらしい。
救出した隊士達の保護を優先して、その後の柱合会議。
だからこんなにも燦々と太陽光が降り注ぐ昼間に会議が開かれた。
…いや、人間だから昼間に行動するのは当然のことか。
寧ろ敵対している鬼に見つからないようにするには、日中の行動が一番安全だ。
「……」
最初こそ驚いたけれど、杏寿郎が嘘なんてつく訳ないし。
納得すれば、すぐに自分が会議に呼ばれなかった理由を悟った。
鬼は部外者だとか言う前に、そもそも私は不要者。
だってお館様も言っていた。
柱に認められなければならないって。
そこに私の決意や意思なんて必要ない。
柱達がそれぞれに決断することだ。
私の声は、在っても意味がないものなんだ。