• テキストサイズ

いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔



「…もしかして」

「! 兄貴はオレが鬼を喰うことは」

「あのお兄さん怖いんでしょ」

「…は?」

「言うことやること厳しいもんね。もしかして玄弥くんもよく暴言喰らってる?」

「何言って…暴言?」

「顔を合わせれば死刑だの死合えだの」

「こっ…しっ?」

「自分の血を飲ませようとしてきたこともあったし」

「は!?」

「怖いよね。目が合っただけで殺されるって思うもんね。正におっかな柱」

「あ、兄貴を悪く言うなよ!」

「え? 怖くないの?」

「怖くねぇ! 兄ちゃんはすげぇ優しいんだ!!」


 兄ちゃん、と呼ぶ玄弥の剣幕に思わず圧される。
 その呼び名にはっとしたように口を閉じると、途端にカカカと玄弥の顔に赤みが帯びた。


(うわあ…可愛いな)


 そしてわかり易い、と内心頷く。
 あの兄にしてこの弟あり、とは外見だけだ。
 中身はまるで違う。


「玄弥くんには優しいお兄さんなの?」

「っ…昔は、そうだ。最近は長いこと会ってなかったから…」

「成程」


 ふむ、と改めてその姿を見る。
 やがてよしと頷くと、蛍は玄弥に片手を差し出した。


「仲良くしよう、玄弥くん」

「は?」

「私がそのお兄さんに殺されない為にも」

「…何言ってんだ?」


 握手の意味で差し出した蛍の手とその顔を、怪訝な顔で交互に見る。
 玄弥の反応は当然だろうと納得しながらも、蛍は止めなかった。


「いやね。玄弥くんに優しいお兄さんなら、その玄弥くんと仲良くなれば私も殺されずに済むかなって」

「どういう理屈だそれ…つーか、それで仲良くしようって。普通オレに面と向かって言うか?」

「だって玄弥くんも色々と素直に話してくれたから。これは私も素直にならないとなって」


 にこりと笑う蛍を前に、ぐっと玄弥の言葉が詰まる。
 反論する気はないのだろう、その反応こそが素直なのだと蛍の口元が綻ぶ。

 兄と似た優しい色を纏っているが、兄よりも親しみ易くて馴染み易い。
 玄弥の傍は、蛍にとって居心地の良いものだった。
 胡蝶しのぶのように作っている仮面が、彼には一切ないからか。

/ 3467ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp