• テキストサイズ

いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔



「ただし懸念もあるな…何を言ったとて異能は鬼の力。それを開花させることは、蛍少女の鬼化を進めることもあるやも…」


 鬼化?
 そんな単語初めて聞いたけど。
 私はもう鬼でしょ。
 それ以上に鬼となるってことは…人の心じゃなくなるってこと?


「むむ…」


 難しそうに己の顎に手を当てて考え込む杏寿郎に、不安が残る。

 杏寿郎は、私みたいな鬼は初めてだって言ってた。
 なら今まで杏寿郎が見てきた異能の鬼達は、当然の如く人間を餌にしていた鬼だ。
 人を喰べない選択をした私が、果たしてそんな力を手に入れられるのか。
 手に入れたとしても…正気を保ったまま操ることなんてできるのか。

 どっちに転んでも不安はある。
 だけどそれは一種の希望だ。
 もし本当にそれが異能の力だとして、もし本当にそれを手中にできたら。

 道は…拓けるのか、な。


「可能性として考えるならば、まずはお館様にご報告を…」

「杏寿郎」

「ん?」

「私、暫く此処で岩柱の稽古をする」


 反復動作がきっかけなら、ものにしたい。
 その為には環境の厳しい此処での訓練が一番の近道だ。


「そうか! ならば俺も」

「杏寿郎は柱の仕事もあるでしょ? 此処に泊まり込みになると思うから、ずっとはつき合わせられないよ」

「むぅ。しかしだな、冨岡にも蛍少女のことは任されてあるし…」

「何かあれば近くに岩柱がいるから。あの人なら大抵は対処できるでしょ?」

「それはそうだが…蛍少女はいいのか? 一人で朝を毎度此処で迎えるんだぞ」


 それは…確かに、怖い。
 もし万が一太陽が顔を出したら。
 そんな不安に苛まれながら野外で過ごすなんて、考えただけでしんどい。

 でも甘いことは言ってられない。
 可能性があるなら、それを手に取らなきゃ。


「覚悟はしてるよ。だから、大丈夫」


 真正面から杏寿郎の視線と向き合う。
 そうして己の思いを伝えれば、杏寿郎はそれ以上の異議を唱えなかった。

/ 3465ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp