第4章 柱《壱》
なんだか蜜璃ちゃんの自由さに負けた。
ほんの少しだけど、心が蜜璃ちゃんに向いて軽くなる。
「大丈夫っ人は見掛けじゃないんだから! お館様も、私の体質を神様に愛されたものって褒めて下さったもの!」
体質?
どんな体質なんだろう…あ、その凄い腕力とか?
普通の女の子の体なのに、あの筋肉忍者を岩にめり込ませられるくらい力あるもんね。
そう言えば私も鬼だから、鍛えればあの忍者を投げ飛ばせるようになれるのかな。
投げ飛ばせなくてもいいから、叩いてきたあの手を避けられるくらいにはなりたい。
…ん? ちょっと待って。
それって私の見掛け、遠回しに心配されてる?
いや、まぁ…蜜璃ちゃんと並べば月とスッポン状態だけど。
胡蝶しのぶと言い、この鬼殺隊の女の子は美人ばかりだ。
「私、蛍ちゃんってその口枷が無かったらもっと可愛いと思うの!」
「彩千代少女は鬼だぞ、甘露寺。そこの線引きを忘れてはいけない」
杏寿郎の言うことは尤もだ。
それでも蜜璃ちゃんは、不満げな表情を見せてくれた。
「でもでも…蛍ちゃんから悪い気配は感じないし…口枷なんてしなくても、襲ったりしないと思うんだけどなぁ…」
「昨日今日でそんなことがわかる訳ねぇだろ」
「そんなこと…っ私、ずっと蛍ちゃんを見てたものっ」
「あーはいはい、そうだったな。ずっと覗き見してたもんな」
「の、覗き見なんて…! 宇髄さん、そんな言い方!」
「ド派手にその通りだろ」
そんなに覗き見されてたの、私。
全然気付かなかった…杏寿郎は気付いてたのかな。
「でも此処には柱しか来ないから、問題はないと思うし…」
え? そうなの?
赤い顔を隠しながら呟いた蜜璃ちゃんの言葉に、衝撃を受ける。
今まで杏寿郎と出掛けた場所は、山や川や岩場ばかり。
自然が多いから、鬼殺隊本部って凄い広い敷地なんだろうなぁとは思ってたけど…私が歩き回ってた場所は、更に人の行き来が限定されてたの?
……道理で、平隊士を見ない訳だ。