第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔
「玄弥は私の継子だ」
「ということは鬼殺隊の剣士…」
「半分は当たっている」
それ、どういう意味?
後藤さんから玄弥くんは鬼殺隊の新人だと聞いた。
最終選別に受かったのなら、剣士として迎え入れられたはず…後藤さんみたいな覆面は付けてないから隠じゃないし。
「不用意に玄弥に近付くことなかれ。特に鬼子、お前は」
「え?」
つい声を上げてしまった。
なんで…あ、柱じゃないから?
そっか、基本は柱以外の人と接触しちゃ駄目だもんね…しっかり釘を刺されてしまった。
これじゃあ〝玄弥くんに取り入っておっかな柱を丸め込む作戦〟は失敗かな…。
世の中、上手くは渡れないものだ。
「近付こうにも彼の方が蛍少女への躊躇が感じられましたが」
「ああ…玄弥は女子(おなご)が苦手なのだ」
「へ?」
今度は思いっきりマヌケな声が出てしまった。
おなご? 女の子が?
だから私だけにぎこちなかったのか…成程、合点がいった。
でも女子が苦手だからってあの反応は…初心だ。初心過ぎる。
あんなに強面なのに、そんな初心なところがあるなんて。
…案外可愛いかもしれない。
「そっか…だから…うん」
「? 何やら嬉しそうだな」
「そ、そう?」
横から覗き込んでくる杏寿郎に、思わず仰け反りながらも慌てて緩んでいた顔を引き締める。
だって、ねえ。この鬼殺隊で私を女として扱ってくれる人なんて蜜璃ちゃんしか思いつかないから。
あ、杏寿郎もだけど。
とにかく私も女だったんだなぁと再確認させられた気持ちだった。
うん、悪くない。
やっぱり玄弥くんは、おっかな柱と違って歩み寄れそうだ。
これなら〝玄弥くんを盾にしておっかな柱の暴挙を防ぐ作戦〟も遂行できるかもしれない。
未来は決して悪くないぞ、蛍!
「よし。稽古付けて杏寿郎っ」
「む! やる気だな、いい心掛けだ!」
「悲鳴嶼さん、も一緒にっ」
「…私か?」
「それでこそ我が継子! 悲鳴嶼殿、共に鍛えようではないですか!」
どうせ鍛えるなら、とことんやった方がいい。
悲鳴嶼行冥は柱の中でも随一の強さを持つと言われてる。
その特訓を受ければ、私も今よりもっと呼吸法を使いこなせるようになるかもしれない。
すなわち飢餓抑制の向上に繋がる!