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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔



「俺はお館様から直々に遠征依頼が入った。すぐに身支度をしなければならない」


 遠征依頼?
 それって鬼退治ってこと?

 偶に鬼殺隊を離れていた義勇さんだったらしいけど、それはいつも一日、二日顔を見せない程度のもので気付けば戻ってきていることが多かった。
 こんなふうに前もって知らされたことはない。

 …ということは…


「長期となるのか? 今回の遠征は」

「わからない。鬼の情報を得て向かった隊士達が、次々に連絡を途絶えて消える山があるそうだ。その量が量だけに胡蝶も同行となった」

「胡蝶なら治療法に長けているしな。万一の時の為か…」


 柱が二人も一緒に遠征なんて。
 それだけ危険な山ってこと?
 やっぱり大事(おおごと)なのかもしれない。


「だから俺が不在の間、彩千代のことは煉獄に任せたい。柱合会議も近い、そう長期にはならないだろう」

「わかった、蛍少女のことは任せてくれ。会議のことも気にするな。それよりも目の前の責務を全うすることが先決だ」


 沢山の隊士達を喰ってる山…其処には強い鬼がいるのかな。
 もしかして妓夫太郎や堕姫達の可能性もある…?

 世間の鬼の強さはわからないけど、確かに童磨も妓夫太郎達も私より強かった。
 もし其処で彼らと義勇さん達が鉢合わせてしまえば。


「彩千代」


 名前を呼ばれてはっとした。
 いけない、考え込み過ぎてた。


「俺がいない間は煉獄の指示に従うように。他の柱にも伝えておく」

「ぅ、うん」

「……」

「…?」


 不意に沈黙を作る義勇さんに、つられて沈黙を作る。
 なんだろう。
 またも感情の読めない目を向けられるけど、さっきの取り調べのような空気は感じなかった。


「ちゃんと戻ってくる。お前は変わらず日々を過ごしていればいい」

「…うん」


 考え込んで難しい顔でもしてしまってたのかな。
 もしかして気を遣ってくれた…?
 わからないけど、義勇さんの言葉には少しほっとした。


「そろそろ日が昇る。戻るぞ」

「冨岡」


 此処は杏寿郎の炎柱屋敷。
 いつもの牢への帰路を向かおうとする義勇さんを、杏寿郎が呼び止める。


「して、その山の名は?」


 その問いに、義勇さんは静かに答えを口にした。


「那田蜘蛛山」















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