第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔
「な、何故って…その…元旦から、そういえば会ってないなって…」
「それを言うなら時透もそうだろう。何故悲鳴嶼行冥にだけ会う必要がある?」
う。義勇さん鋭い。
そんな感情の読めない黒い眼をじっと向けないで欲しい…取り調べされてるような気分になる。
その日の杏寿郎との訓練を終えて、義勇さんも立ち合わせた時を見計らって提案してみたけど。
義勇さんだけじゃなく、杏寿郎もいる時を考えて行動したのは幸いだった。
「もしや稽古強化の為か!? 蛍少女よ!」
救いの船を出してくれるかのように、はっと理解したような顔で声を上げてくれたからだ。
「そ、そう。強化の為っ」
よくわからないけど、ここは杏寿郎に乗っておこう。
「成程。確かに悲鳴嶼殿の屋敷がある山奥は、空気も薄く道も険しい。恰好の稽古場だ!」
そう、なんだ。
知らないけど。
じゃあ、そういうことで。
「流石鍛錬の申し子! 良い案だ! 俺は賛成するぞ!」
「本当っ?」
鍛錬の申し子なんて肩書き、持った覚え一度もないけど。
毎回厳しい訓練(時として暴挙)を強制してくる周りの柱に合わせてるだけだけど。
「……」
そして義勇さんの表情は未だに険しい。
というか胡散臭そうにこっち見てる気が…!
そ、そんな目で見ないで下さい。
「悲鳴嶼殿の屋敷へと向かうなら俺も同行しよう。どうだ? 冨岡」
「……いや、」
自ら先導してくれる杏寿郎に、胡散臭そうな目で未だに私を見ていたものの、義勇さんは静かに頸を横に振った。
あ…駄目、なのかな…。
「悪いが、それは煉獄に任せる」
え?