第10章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る✔
「その新人って、もしかして竈門炭治郎?」
「かまど? あー…いや…そんな名前だったか…?」
前のめりになるくらいの勢いで訊いたのに、拍子抜ける程に後藤さんは曖昧な返事をした。
え待って。
新人って炭治郎のことじゃないの?
「悪いな、新人全員は把握してなくてよ。今回の最終選別で残ったのは五人だってのは知ってんだけど」
五人という合格者数が、多いのか少ないのかもわからない。
最終戦別のことは詳しく知らないからなんとも言えないけど…ただ、それでも難しい試験だって聞いたことはある。
「オレが知ってるのは、栗花落カナヲと不死川玄弥って男女だけだ」
つゆり、かなを?
知らない名前だ…でももう一人の名前には反応した。
それも知らない名前だった。
でもその苗字は余りにも聞き覚えがあったから。
そんな珍しい苗字、早々被らないと思う。
ってことは、
「その、しなずがわ、げんや?って人は、もしかして風柱の血縁者?」
「オレもよく知らんが、噂じゃ弟だとか」
「…あのおっかな柱に兄弟がいたんだ…」
「だな。オレも吃驚だよ」
あんな身内だって殺してしまいそうな顔してるのに。
意外や意外、意外過ぎる。
「ちなみにカナヲって娘は蝶屋敷に元々住んでた娘なんだ。蟲柱さんに無断で選別を受けたとか…剣士として育てられた訳でもないのに、すげぇよな」
「カナヲって…名前からして女性?だよね…」
「ああ。今は蟲柱さんの継子として務めてる」
女性の隊士もいるんだ…そうだよね。
胡蝶や蜜璃ちゃんもそうなんだから。
じゃあ玄弥って人も、おっかな柱と暮らしてたり?
「蝶屋敷には行ったことないけど、おっかな柱の屋敷には何度もお邪魔してた。でも玄弥って人は見なかったなぁ…」
「そらそうだろうよ。その新人は今は岩柱さんの継子をしてるんだから」
「え? 岩柱って、悲鳴嶼、行冥の?」
驚いた。
血縁者だと継子にしちゃいけない決まりでもあるのかな。
まぁ確かに常時強面なおっかな柱より悲鳴嶼行冥の方が、色んな意味で師として適してそうな気はするけど。