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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第9章 柱たちと年末年始✔



「…煉獄。お前はあいつの言っていることが、ああも詳細にわかるか?」

「甘露寺は初めて会った時から蛍少女と意思疎通が取れていたようだったからな。なに、仲良きことは良いことだ」


 蜜璃と蛍に誘われるまま、いつもは重たい義勇の足が渋々とも踏み出る。
 その様子に静かに笑う杏寿郎と、頸を傾げる小芭内もまた後を追ったのだった。


「お、大吉か! 年明けから派手に運が良いな! 流石俺様!」

「中吉ですか。悪くはないですね」

「はわっ私も大吉だぁ!」

「む、小吉か。まずまずだな」

「……」

「あら? 蛍ちゃんはなんだったの?」


 神社の手前の小屋に置いてある六角御籤(ろっかくみくじ)。
 それを振り、出た数字を棚の扉から当てて引く。
 各々が引き当てた運勢を喜ぶ中で、引いたおみくじを見つめる蛍の手は微かにぷるぷると震えていた。

 興味を持った天元達が覗き込んだ手元には、きっちりと達筆で書かれた"大凶"が。


「お、ま…マジかよ…!」

「わ、笑ったら可哀想よ宇髄さん…っ」

「大凶か…初めて見たな」

「悦び事、無し。病気、長引く。待ち人、来たらず…散々ですねぇ」

「…ふぐ…」


 腹を抱えて笑う天元や笑顔で針を刺してくるしのぶに、更に蛍の頭が垂れ下がる。
 ぼそりと告げた小芭内の言葉も地味に痛い。


(これから頑張らなきゃって時なのに…不吉な予感しかしない…)


 拝殿の前でも誓ってみせた。
 その出鼻を挫くような結果に、思わず沈む。


「そう落ち込むものでもない」

「…ふ?」


 蛍の真上に一つ、声が降ってくる。
 ジャリジャリと数珠を擦り合わせる音につられて顔を上げれば、頸を大きく曲げなければいけない程の壁が目の前にあった。
 岩柱である悲鳴嶼行冥だ。


「この祝いの場で、悪運を引くことの方が珍しい。それだけ強運の持ち主とも言える」

「凶運の間違いじゃねェのか? 悲鳴嶼さんよォ」

「そうであっても、逆手に取れば運も上がる。御籤の通りなら今この場での出来事が鬼子にとっての大凶だ。今日は最悪な日だったか?」

「…ふふ」


 童磨達、他の鬼に出くわしたことも蛍にとっては悪いことではなかった。
 頸を横に振る蛍に、静かに行冥も頷く。

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