第9章 柱たちと年末年始✔
(義勇さんだけじゃないな…胡蝶や蜜璃ちゃんも顔面偏差値高いし、天元も化粧落とせば美丈夫だし、時透くんなんて中性的な綺麗顔だし…なんだろう。人の為に戦っている鬼殺隊だから、神様も目を掛けてくれてるのかな。それにしたって格差が酷い)
鬼である自分はどうだ。
と考えれば悲しくなる程の格差。
悶々と考え込む蛍の足が、かこりかこりと遅くなる。
あっさりと追い抜いた義勇が催促する為に手を引けば、はっと顔が上がる。
しかし普段履き慣れない、機能性よりもデザイン性を重視した下駄の所為か、かこかこと鳴らしてついてくる蛍の足取りは義勇に比べ遅い。
つい出そうになる溜息を呑み込んで、義勇は自身の歩幅を縮めゆっくりと踏み出した。
誰かとこうして手を繋いで歩いた記憶など、ほとんどない。
幼い頃にしか残っていない僅かな記憶だ。
それも自分が手を引くよりも、引かれるばかりだったように思う。
他人の手を引いて歩みを合わせるなど、したことがない。
だからこそ初めて知った。
(…"小さい"な)
言葉通りの意味ではない。
それでも、すっぽりと包み込める手の大きさや、憂に狭い歩幅や、ほんの少し頸を下に傾けることで見える顔の位置。
そんな幾つもの蛍を形成するものが、彼女の小ささを伝えてくる。
幼子に変化していた時とは違う。
「ふ?」
「…急がなくていいから、転ぶな」
「ふく」
なんだか柔らかくて儚い、それは不思議な感覚だった。
「蛍ちゃんっ!」
「ようやく見つかったか…」
合流地点である、鳥居を出て幾分下った所。
柱達が集まっている場所に辿り着いた義勇は、蛍の手を引いたまま足を止めた。
「問題はない。…それより、」
鎹鴉の伝達で戻って来ていたのか。半泣きで笑顔を浮かべる蜜璃と、やれやれと溜息をつく小芭内が最初に出迎えた。
彼らの反応は想定内だったが、想定外であったことが一つ。
「なんだそれは」
問い掛ける義勇の眉が中央に寄る。
見据えた先は、蜜璃達の後方にいる柱達。