第4章 柱《壱》
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「でーたーでーたーつーきーがー♪ まーぁるいまーぁるいまーんまるいー♪ ぼぉんのよーなーつーきーがー♪」
「楽しそうだな! 甘露寺!」
「だって蛍ちゃんとお喋りできるのが嬉しくって!」
「喋るったって、片方は筆談だろ」
蜜璃ちゃんが歌うような、丸い月に見下された原っぱ。
何処から持ってきたのか、大きな敷布の上で杏寿郎のさつまいも弁当を並べると、まるで夜の遠足のようだった。
ふふふはははと笑い合う蜜璃ちゃんと杏寿郎に対し、忍者は始終冷めた反応。
お酒がないのがつまらないんだとか。
「そんな顔しないで下さい、宇髄さん。今度私が甘〜いお菓子を沢山用意してくるから!」
「いやだから酒。菓子じゃなくて酒。俺が欲しいのはさ」
「わぁ、このさつまいもご飯美味しい!」
「聞けよ!」
なんだろう、振り回されてるなぁ。
蜜璃ちゃんは杏寿郎の言う通り、感情に素直な女の子だった。
でもそこに嫌味さは一つもない。
多少空回りしても、その根本には彼女の優しさが見え隠れしている。
うん、忍者よりずっと感じの良い娘(こ)だ。
「煉獄さん! このさつまいもご飯、とっても美味しいわ!」
「わっしょい!」
「え?」
「あ?」
「?」
…わっしょい?
「煉獄さ」
「わっしょい!」
再度呼び掛ける蜜璃ちゃんを遮って、ぱくぱくとさつまいもご飯を口に運ぶ杏寿郎が器用に叫ぶ。
「わっしょい! わっしょい!」
え…何それ。
桜餅の時はうまいうまいと叫んでたけど、なんで今回はわっしょい?
「何言ってんだ煉獄の奴…」
「…そういえば、」
「「?」」
何がそういえばなのか。
思い出したようにはっと箸を止める蜜璃ちゃんに、忍者と並んでその顔を見る。
「煉獄さん、大好きなさつまいもを食べる時はわっしょいわっしょい叫ぶ癖が…!」
「いやどんな癖だよ」
衝撃の事実とばかりに指差す蜜璃ちゃんに、冷ややかな忍者の突っ込みが入った。
いや、まぁ、確かにどんな癖だけど。
というかなんでわっしょい?