第9章 柱たちと年末年始✔
「そんなに口枷の君が大事ならそれも一緒に連れて行けばいい。蛍ちゃんが望むなら、それも一緒に俺が世話してあげるよ」
"それ"って…なんだか嫌な響きだ。
物のように扱われている気になる。
「ふ…」
「そうだ。それがいい」
「ふ、ふく」
頸を横に振ってみても、童磨は見えていないみたいだった。
だって満面の笑みで名案とばかりに伝えてくるから。
「だから、ねぇ。蛍ちゃんの体を俺にくれないかな。大丈夫、優しくするから」
いやなんか言い方が卑猥。
その体を名指ししてくるのもやめて欲しい。
それとも体が手に入れば、心はどうでもいいってこと?
…やっぱり、この鬼は変だ。
「ふんふふ」
「え?」
「ふ!」
「…そんなに嫌なの?」
よくわからないけど、言いたいことはどうやら童磨には大体伝わるらしい。
黒板を堕姫に壊されてしまった以上、言葉のやり取りはできないから願ったりだ。
「何故かなあ。俺には蛍ちゃんが否定する理由がわからないよ」
私も貴方の思考がよくわかりません。
「鬼は人間と違って命の期限が無い。望めば永遠に生きられる。人間の一生なんて、瞬く間に過ぎる程さ。口枷の君だって、瞬く間に蛍ちゃんの目の前を通り過ぎていくよ」
人と鬼との寿命の違いなんてわかっ……待って。
なんで、童磨は義勇さんが人間だってわかったの?
…人の匂いがするから?
「俺なら傍にいてあげられる。嬉しいことも楽しいことも、なんでも一緒に共有できるよ」
「…ふ…」
…そんなことを望んで、私は義勇さんや鬼殺隊の傍にいる訳じゃない。
そう、答えはわかり切ってるのに。
擬態化をやめた童磨の虹色の瞳に間近で捉えられると、息が詰まるような感覚を覚えた。
目が逸らせなくなる。