第9章 柱たちと年末年始✔
童磨の色は、今まで見たことのない色だ。
皆一律に一つの色を持っているのに対して、童磨は鮮やかに移ろう色だった。
光の当たる水面のように、ゆらゆらと揺れる箇所から色が移ろい変わっていく。
その変動は一瞬で、一時とも同じ色でいない。
それが色鮮やかな虹色のように見えるんだ。
その両眼のように。
…両眼?
「そんな哀しいこと言わないでおくれよ…君は鬼だから喰わないし、綺麗な衣や化粧品だって用意してあげる。俺の傍にいればお腹が空くことはないし、寒さに凍えることもない。なのに何故だい?」
下がる眉。
その下にある両眼には、目を奪われるような虹色が浮かんでいた。
あのきらきらと煌めいていた鱗片は、童磨自身が持つ瞳の色だったんだ…。
と、いうか。
「その口枷を付けた相手の方がいいってことかい? それなら俺がもっと綺麗な口枷をあげよう」
そんな綺麗な瞳を潤ませて顔を近付けないで欲しい。
近い。
なんだか言い様のない圧が。威力が凄い。
そして童磨の方が当然私より大きな体をしているのに、そんなに背を丸めて覗き込まれると、私が苛めているみたいに見えるから。
「ふ…ふく。ふふ、んふ」
「え?…その口枷でいいって?」
あ、伝わった。
両手を握り締められてるから、動かせるの顔だけなのに。よくわかったなぁ。
「そっか…そんなに口枷の君が大事なんだね…」
いやそういう訳では…というか口枷の君って何。
短歌にでも使われそうな表現、恥ずかしいからやめて欲しい。
義勇さんを見たら思い出して笑ってしまうかもしれない。
だって口枷の君って。
笑うでしょ。
「そうだ。それなら良い考えがある」
哀しんでいたかと思えば、急に何かを思い付いたのか笑顔になる。
ころころと変わる表情は蜜璃ちゃんのようで、でも全然違う。
蜜璃ちゃんは、本当にその感情に向くままに笑顔や涙を浮かべていたけど。
童磨は…上手く言えないけど、なんだかその場の流れに合わせて表情を変えているような気がする。
そこに心が在るから動いているようには、なんだか感じられない。