第9章 柱たちと年末年始✔
神社までは距離があるらしく、民衆で出来た長蛇の列に並ぶこととなった。
大きな神社に見合った大きな聖地なんだろうな。
その途中には色んな作法が備えられている。
「鳥居だな! 皆、一礼を忘れなきよう!」
「ふ?」
「鳥居は、あれなの。あれ…えぇっと…」
「神の境内への入口だ」
「そう! そうなの!」
神社の敷地に入る手前にある、大きな赤い鳥居。
勢いよく一礼する杏寿郎に頸を傾げれば、蜜璃ちゃんの代わりに伊黒先生が説明してくれた。
「鳥居の先は参道だ」
「参道は端を通るように…中央は神の道となる」
伊黒先生に続いて静かに忠告してくる悲鳴嶼行冥に、言われた通りに一礼をして、鳥居を潜って、参道の端を進む。
日本ってそういう仕来り多いよね…日本人だけど知識が朧気なところは、割と沢山ある気がする。
次に見えてきたのは手水舎(ちょうずや)。
あ、これは知ってる。手や口をお水で清めるんだ、確か。
…私、口枷してるけど。
「…ふく…」
「絶対に口も濯がなきゃいけない理由はきっとないわ。はい、これで綺麗っ」
どうすべきかと棒立ちしていると、蜜璃ちゃんが笑顔で手元だけを清めてくれた。
その後にちゃんと、手を拭いて貰って手袋もまたして貰って。
凄く親切でありがたいけど、偶に子供扱いされてるような…ありがたいけど。
私もう、小さな子供の姿はしてないよ蜜璃ちゃん。
「おい時透っそいつは飲み物じゃねぇよ飲むな!」
「え? ふぉうなの?」
後方からは天元の騒ぎ声が聞こえた。
柱だからって全員が作法に詳しい訳じゃないみたいだ。
自称神忍者も常識外れなところあるけど、割とこういう時は全うなことを言ってる気がする。
大変だなぁ、周りへの突っ込みも。
まぁ頑張って下さい。
次に…あれ? なんだろう。
道の外れに、大きな釜。
その中には沢山立てられた線香がある。
あれ確か…線香の煙を浴びて、身を清めるものじゃなかったっけ。
「あれは香閣(こうかく)ね。此処は神社の隣にお寺もあるから」
へぇ、だからこんなに人が多くて敷地が広いんだ。
神社とお寺の違いなんてよくわからないけど、この香閣とか呼ぶ釜は、お寺の仕来りらしい。