第9章 柱たちと年末年始✔
「冨岡さんも不死川さんも! 蛍ちゃんが可哀想だわ!」
「あ?」
「しかし…」
「そういう時はね、こうしていればいいの!」
そう言って蜜璃ちゃんの手が、ぎゅっと私の手を握る。
「さ、行きましょう蛍ちゃん。離さないでねっ」
握った手を引く蜜璃ちゃんの力は、先程の紐の引き千切りが嘘のように優しい。
撫子色を守った温かい笑顔を向けられて、気付けば足は踏み出していた。
「あらら…行っちゃいましたね」
「あんな覚束無い拘束では…」
「覚束無くとも、あの方が蛍少女も立場を忘れて楽しめると思うぞ。冨岡も大目に見てやるといい!」
「……」
後方から聞こえる会話に、からころと下駄を鳴らしながら振り返る。
ちらりと見えた義勇さんの顔は、訝しげながらも追っては来なかった。
よかった。
「蛍ちゃん?」
「ふ!」
呼び掛けてくる蜜璃ちゃんに、頸を横に振って大丈夫なことを伝える。
握ってくれた手を離さないように私からも握り返した。
折角蜜璃ちゃんが、私の為にと踏み出してくれたんだ。
それを断る理由なんて、何処にもないから。