第9章 柱たちと年末年始✔
蜜璃ちゃんもいつもは三つ編みだから、それと似せたかったんだろうな…その証拠に、蜜璃ちゃんの髪にもいつもはない大きな紺色のリボンが飾られている。
蜜璃ちゃんだと文句なしに可愛いけど。
「大丈夫? 着付けは苦しくなぁい?」
「ふく」
気遣ってくれる蜜璃ちゃんに、頷いて大丈夫なことを伝える。
今の私は口枷を付けているから。言葉では伝えられない。
「アレだな。馬子にも衣装ってやつだな」
「……」
「言いたいことがありゃ言えばいいだろ?」
「…ふごうく」
「何言ってるかさっぱりだな!」
…このお祭り忍者は。
わかっててからかってくる感じが相変わらずいけ好かない。
「俺は似合っていると思うぞ!」
そんなやり取りに援護を入れるつもりなのか、杏寿郎が褒めてきてくれる。
鬼の私にもこんなに親切にしてくれるのは杏寿郎と蜜璃ちゃんだけだよ。本当。
ただ、
「そういうことは面と向かって言ったらどうですか? 煉獄さん」
「む、むう」
胡蝶の言う通り。
思いっきり明後日の方向を見てる杏寿郎は、本当に容姿を見てくれているのか若干不安になる。
なんで思いっきり顔逸らしてるのかな…そんなに目に痛い? もしかして。
確かに普段、こういうお洒落用の着物なんて着ないから。
馬子にも衣装かもしれないけどさ…後、蜜璃ちゃんと同じ着物っていうのもやっぱり地獄だな。
顔面偏差値の差が余計に際立ってしまう。
「ふんふふ」
「そうねっ早く参拝に行きましょ!」
そんな感情を切り替えるつもりで蜜璃ちゃんの袖を軽く引っ張って、遠目に見える大きな神社を指差す。
うん、それがいい。
「その前に一点気になることがあんだけどよォ」
なのに次に間を割って入ってきたのは、吐く息も白く変わる程に寒い夜に、胸元全開で着物を着ている不死川実弥だった。
一応、柱の皆も普段着姿で神社へと赴いてるけど…このおっかな柱は相変わらず鬼殺隊の隊服と同じ着方をしてる。
なんでそこまで大っぴらに胸元開くのかな。
蜜璃ちゃんなら目の保養だけど、こんなおっかな柱の傷らだけの体なんて恐怖を煽るだけだ。
「冨岡ァ。なんだその紐は」
等しく傷だらけの手で不死川実弥が指差したのは、私。
…の、胴体。