第9章 柱たちと年末年始✔
隣で身を起こす義勇さんは訝しげな表情をしてる。
それでも天元の言葉に一斉に散らばった鼠達は、あちこちでぺしぺしと柱達の体を叩き起こし始めた。
か…可愛い。
私も寝てたらああして起こしてくれたのかな…残念。
「チュッ」
「ぁ…はじめ、まして」
すると一匹、私の下へ小走りに寄ってきた鼠がいた。
走る時は四足歩行だけど、目の前にくるとスッと立ち上がる。
そしてスッと片手を上げた。
うわ凄い。
屈んで頭を下げれば、小さな小さな手を伸ばしてくる。
恐る恐る指を伸ばせば…わ。するすると軽い身のこなしで掌へと登ってきた。
お椀のように両手を皿にした上に、ちょこんと立つ額当てをした鼠。
か…可愛い。
「わたし、いろちよほたるっていうの。よろしく、ね」
「チュウチュ!」
何を言っているかはわからない。
でもなんとなく会話はできてる気がする。
というか可愛い。凄く可愛い。
こんなに愛嬌があって賢い鼠を沢山飼ってるなんて羨ま…いや、飼ってるんじゃなくて仲間、なのかな?
ただ筋肉は凄いけど。
感心する程、立派にムキムキだけど。
「んんん〜…!…あれ…っいつの間に寝ちゃってたのかしら!?」
「なんだこいつァ…」
「宇髄さんの忍鼠ですよ。もう朝ですか?」
「いや、まだ夜のようだな…冷えが増している」
「……む」
目の前の小さな存在に目を奪われていたら、続々と柱達が起きてきた。
そういえばまだ朝じゃないけどなんで起こしたのかな…。
あ、そっか。
こんな隙間風の入る場所で寝たら風邪引いちゃうかもしれないし。
各屋敷に戻る為に起こしたんだ。
そうだよね。
こんな所で寝るのは衛生的にも悪そうだもんね…。
…少し寂しいけど。
「よし。皆起きたな」
散らばっていた鼠を召集する天元に、私の掌に乗っていた鼠もするすると下りていってしまった。
ぁ…残念。
「蛍。お前、体の調子は?」
「え? とくにもんだいはないけど…」
唐突に振られて、慌てて立ち上がる。
「じゃあまだつき合えるな」
つき合う?
つき合うって…まだ何かする気なの?
ご馳走もお酒も堪能して組手も室内遊びもしたけど。
まだやり残してること、あるの?