第9章 柱たちと年末年始✔
「──は、何言ってんだか」
最初に笑ったのは天元だった。
「"また"っつー前に、"まだ"終わってねぇだろ」
「わっ」
大股で歩み寄ったかと思えば、軽々と小さな体を持ち上げる。
ひょいと片手で肩に乗せられ、慌てて蛍は筋肉隆々なその肩にしがみ付いた。
「この部屋の主も望んでるみたいだし、まだまだやるぜ。まずは悲鳴嶼さんの優勝祝いだ! 勿論お前の祝いもなッ」
「え…わたし、まけて…」
「言っただろ、不死川に勝ったら盛大に祝ってやるって」
憶えとけよと笑い飛ばすように告げた天元が、柱達に向き直る。
「その後は敗者復活戦だ!」
「えっまたうでずもうするのっ?」
「同じことやるなんて芸がねぇだろ」
肩に蛍を乗せたまま、器用に天元が取り出したもの。
どんっと机に置かれた色鮮やかな図面を、柱も含めて全員で覗き込む。
「次はこれだ! 人生双六!!」
「…わぁ(凄い庶民的な遊びに変わった…)」
蛍にも見覚えがあるそれは、子供から大人まで大人数で楽しめる室内遊びだった。
こんな庶民的な遊びもするのかと、思わず柱達の反応を伺ってしまう。
「わあ懐かしい! 昔よくこれで遊んだのよねっ」
「何? じんせいすごろくって…」
「時透君、知らないんですか?」
「駒を自分に見立てて、賽子(さいころ)を振って出た目の数だけ進む。その道中に私腹を肥やしたり他者を蹴落としたりする遊びだ」
「うむ…伊黒の言う通りだが、そんな物騒な遊びだったか…?」
「いいじゃねェか。他人を蹴散らすってところは変わりねぇだろォ」
「見たことはあるが私もしたことはないな…」
「お。悲鳴嶼さんも初めてか、丁度いい。これなら誰が勝つか予想もつかねぇし、折角柱全員集まってんだ。どいつが一番世渡り上手か決めようぜ」
天元の誘いに、意外にも柱達は反対姿勢を示さなかった。
やはり変なところで団結力が高いと、蛍も感心してしまう。