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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第9章 柱たちと年末年始✔



「口元が血で溢れているな…また己を喰らったのか。嗚呼、哀れな…」

「我を忘れて殺人衝動に走るよりは、よっぽどマシだと思うけどな。俺は」

「そうまでして生き永らえることに、なんの意味がある…?」

「さぁな。そうまでして生きたいんでしょーよ。そこに大層な理由が必要か?」

「……」


 ジャリジャリと数珠を擦り合わせていた行冥の手が止まる。
 何を問うでもなく、じっと隣に立つ天元を光のない目で見つめた。


「蛍少女よ、これは何本だ?」

「…さんぼん」

「正解だ! 正しい認知ができるようだな!」


 立てた指を数える蛍に、満足そうに杏寿郎が頷く。
 しかしその場で不満な表情を抱える者が一人いた。


「何邪魔してんだテメェら…そいつは俺の獲物だったんだぞ」

「勝敗は既に決していた。甘露寺が告げていただろう」

「ァあ? それでもそいつは殺る気だっただろうが」

「そうけし掛けたのは不死川だ。前にも言ったはずだ。彩千代を殺したいなら、まず俺と話せと。…これ以上こいつに好き勝手するなら俺も黙っておかない」

「テメェが俺の相手をするってか? 上等だァ」

「冨岡も不死川も落ち着け。この場は柱会だぞ。力比べ以外の喧嘩はご法度だ」


 羽織に包まれたままの蛍を抱き上げた杏寿郎が、静かに頸を横に振る。


「それに不死川。冨岡の言う通り、蛍少女に手を出したいなら彼を通す義務がある。お館様と冨岡が交わした契だ」

「ッ…」


 今度ばかりはその言葉が響いたようだった。
 舌打ちをするもののそれ以上喰って掛からない実弥に、ようやく杏寿郎の表情も和らぐ。


「しかし良いものを見せてもらった! 蛍少女には不運だったかもしれないが、よく不死川の稀血に耐えた」

「ぎゆうさんが、おさえこんでくれたから…わたしひとりじゃ…どうにも…」

「その冨岡を跳ね除けることもできたはずだ。何より蛍少女の意志が、稀血の誘惑に勝ったのだ。胸を張っていい」

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